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[キーワード] 炭素動態、土壌有機物、適応的熱帯林管理、追加性効果、哺乳動物多様性

[F-071 炭素貯留と生物多様性保護の経済効果を取り込んだ熱帯生産林の持続的管理に関する研究]

(4)森林認証導入による熱帯生産林における炭素貯留と生物多様性保護の追加性に関する研究[PDF](463KB)

 京都大学農学研究科

北山兼弘

 <研究協力者>

 

京都大学農学研究科

今井伸夫

京都大学農学研究科

喜多智

京都大学農学研究科

鮫島弘光

  [平成19〜21年度合計予算額] 65,301千円(うち、平成21年度予算額 23,195千円)
※予算額は、間接経費を含む。

[要旨]

  持続的森林管理方法である「低インパクト伐採」と「森林認証」が導入されているマレーシア、サバ州の熱帯生産林と隣接する従来型の破壊的森林伐採の生産林を比較することにより、持続的森林管理のプラス効果を、炭素貯留と生物多様性の2側面から検証した。地上調査と衛星を使った解析から、持続的森林管理の導入約10年後に、地上植生には平均54 Mg・ha-1の炭素が追加されていることが明らかとなった。また、持続的森林管理が導入された森林では、樹木の多様性や更新は原生林と同程度に維持されていた。持続的森林管理による炭素貯留の長期的効果を生態系モデルCenturyを用いて検証した。温暖化とエルニーニョ干ばつ下で、地上部バイオマスを50〜60%低減させる従来型伐採を1回行うシナリオでは、生態系の総炭素量は100年経過しても原生林レベルにまで回復しなかった。一方、低インパクト伐採(地上バイオマスを5〜20%低減)では、従来型伐採ほどの顕著なバイオマスの低下やネクロマスの生成は見られず、生態系の総炭素量はより早く原生林レベルに回復した。このことから、伐採時の伐採強度が、その後の森林炭素量の回復過程に最も大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。土壌炭素動態の予測精度の向上を目的に、土壌分解系における微生物群集組成と分解特性の関係を調査した。微生物群集組成をリン脂質脂肪酸マーカーにより調べたところ、伐採圧によって群集組成が変化することが明らかとなった。微生物群集組成の変化は土壌炭素無機化速度の低減を引き起こすことが示された。中大型哺乳類の相対生息密度とその分布を自動撮影カメラを用いて広域把握する手法を開発した。827km2の広域面積の中大型哺乳類の種多様性を解析したところ、種数や各種の撮影頻度に大きな空間的変異があることが明らかになった。さらに、生息分布モデルの構築によって森林管理シナリオごとの将来の生息密度の増減を予測することができた。この結果、多くの種において持続的森林管理は生息密度にプラスの効果を与えていると予測された。