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[キーワード] 慣習的土地利用、林産物採集、商業伐採、SFCの原則・基準、オランスンガイ

[F-071 炭素貯留と生物多様性保護の経済効果を取り込んだ熱帯生産林の持続的管理に関する研究]

(3)熱帯林生産林における森林認証導入の社会的インパクトに関する研究[PDF](423KB)

 高知大学自然科学学系

市川昌広

 <研究協力者>

 

京都大学地域研究統合情報センター

内藤大輔(平成19〜20年度)

  [平成19〜21年度合計予算額] 14,960千円千円(うち、平成21年度予算額 6,534千円)
※予算額は、間接経費を含む。

[要旨]

  本研究は、森林認証制度の導入が周辺の地域社会にどのような社会・経済・文化的な影響を及ぼすかを調査・検討し、森林認証制度の社会的配慮について留意点・改善点を提言することを目的としている。調査対象地域として、マレーシア、サバ州のデラマコット森林管理区およびそこに隣接する先住民オラン・スンガイの村落周辺を設定した。森林認証制度が導入される前には、村人は慣習的に相当広い範囲を林産物採集のために利用していた。しかし、1960年代にデラマコット森林管理区が設定されたことや1997年に森林認証が取得されたことによって、次第に境界の管理が厳格になり、森林管理区内での林産物の利用が難しくなった。このことに対して村人たちは不満をつのらせていた。このような歴史的背景の中で、森林認証が発行される際のFSC認証機関の審査状況とサバ州林業局がどのような社会配慮を採ったのかについて調査した。その結果、認証審査員から林業局に対して、地域住民への社会的インパクトを改善するように要求が出されていたことがわかった。それに対して、林業局は地域住民の意見・要求を聞く機関を設置したが、既存の法令・規則内における対応しかできなかった。一方、マレーシアの他州における森林認証制度導入の事例とサバ州での事例を比較したところ、サバ州でのFSCによる認証は上述のように必ずしも十分ではないものの、他州が導入しているMTCC認証と比較すれば多くの社会的配慮がなされていることが明らかになった。森林認証制度の導入に伴う、地域社会への影響についての問題点としては大きく2点ある。ひとつは、FSCの原則・基準の中に両立が難しい項目があることである。たとえば、原則1では森林管理区の厳格な管理が求められる一方、原則3では先住民・地域社会の慣習的な所有・利用の権利の保障をうたっている。2つ目は、上で述べたような先住民・地域社会の村落において慣習的に利用されてきた歴史的変遷、経緯やその利用領域について配慮がなされないことである。