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[キーワード] 海鳥繁殖地、監視カメラ、クマネズミ、ノネコ、捕食被害

[F-051 脆弱な海洋島をモデルとした外来種の生物多様性への影響とその緩和に関する研究]

(6)侵入哺乳類が小型海鳥類の繁殖に与える影響評価[PDF](472KB)

 特定非営利活動法人小笠原自然文化研究所

堀越和夫・鈴木 創

 <研究協力機関>

 

特定非営利活動法人小笠原自然文化研究所

千葉勇人・佐々木哲朗・松林浩之

  [平成17〜21年度合計予算額] 21,900千円(うち、平成21年度予算額 4,576千円)
※予算額は、間接経費を含む。

[要旨]

  小笠原諸島におけるノネコによる海鳥類への繁殖影響を評価するため、母島南崎のオナガミズナギドリおよびカツオドリの夏期繁殖地において被害調査を行い、ノネコにより2種の繁殖親鳥が10年以上に渡って捕食され、繁殖個体がいなくなっていることがわかった。その後、ノネコを捕獲排除し、防除柵を設置した結果、少なくともオナガミズナギドリの繁殖の再開が確認された。ネズミ類による海鳥類への繁殖影響を評価するため、父島列島東島(28ha、無人島)において海鳥の営巣センサスと被害状況の調査を行った。夏期繁殖種である小型海鳥のアナドリとその卵の捕食が確認され、被害規模は1000羽を越える深刻な事態と考えられた。捕食者は食痕等よりクマネズミと判断された。冬期繁殖種においても、オーストンウミツバメなどの捕食死体が発見され、東島では年間を通じてクマネズミが海鳥類に被害を与えている状況が判明した。また、東島ではセグロミズナギドリの小笠原諸島で70年ぶりの繁殖が確認された。本種の繁殖規模は100羽以上と推定されたが、まだネズミによる食害は観察されなかった。小笠原群島におけるクマネズミの分布と海鳥類への被害状況を明らかにするため、海鳥が繁殖している34箇所の離礁・属島において上陸調査を行った。このうち約7割の海鳥繁殖地の島にネズミの侵入が判明し、聟島列島北之島(19ha)と人為的に排除された父島列島西島(49ha)を除けば、2.3ha以上の海鳥繁殖島には全てネズミが生息していた。各島の小型海鳥類の繁殖規模とクマネズミによる被害状況を併せて分析すると、父島列島の東島と南島、聟島列島の聟島鳥島の3島において、クマネズミ駆除の優先度が高いと考えられた。海鳥類の主要分布地は居住地から離れているため、個体群のモニタリングを行う上では、遠隔地から操作可能な機器が必要である。そこで、電波法等の免許・許可が不要で、野外耐久性のある遠隔監視システムとして、LAN接続カメラを利用したシステムを開発した。海鳥繁殖地におけるシステムの試験運用においては、4.5km離れた場所からの稼働に成功した。