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[キーワード]爬虫類、侵略的外来生物、根絶、個体群動態、防除

[F-051 脆弱な海洋島をモデルとした外来種の生物多様性への影響とその緩和に関する研究]

(5)グリーンアノールの生息実態と地域的根絶手法に関する研究[PDF](470KB)

 財団法人自然環境研究センター 研究部事業部

戸田光彦

<研究協力機関>

 

財団法人自然環境研究センター 研究事業部

中川直美・高橋洋生・鋤柄直純・常田邦彦・高藤裕二

東海大学札幌校舎 生物理工学部

竹中 践

(株)シー・アイ・シー 研究開発部

小松謙之・今井金美

尾園写真事務所

尾園暁

 森林総合研究所森林昆虫研究領域

 

  [平成17〜21年度合計予算額] 21,900千円(うち、平成21年度予算額 4,576千円)
※予算額は、間接経費を含む。

[要旨]

  本研究は、外来生物グリーンアノールの地域的な根絶を図るために必要な条件を把握して、排除に係る基本的な考え方をまとめることを目的として実施された。
  野外調査に基づき推定された生息密度は500〜800個体/haで、現在、個体数が急増している状況にはないと推定された。飼育実験から、1個体の雌は1年に平均13.7個の卵を産出すると推定された。産卵は主に地表の物陰や植物の茂みの浅い土中でなされることが確認された。野外調査及び飼育実験に基づき作成された生命表によると、1,000個の卵から孵化するものが900個体、翌年まで生存して性成熟に達するものが103.5個体、2歳まで生存するものは36.7個体であり、成体の大多数が1歳または2歳と推定された。推移行列モデルを用いて推定したところ、本種を数年間以内に根絶するためには、毎年90%以上の個体を排除することが必要と結論された。このため、本種の根絶のためには多数の個体を短期的に排除する必要がある。また、地域的な根絶達成のためには、個体の移動を防ぐフェンス等での遮断が必要になる。アノールの駆除を行っている地域では、捕獲開始直後に比べ、捕獲開始1年後には、生息個体の体サイズが小型化していた。これは高 い捕獲圧に伴って大型・高齢の個体が減少した結果であると考えられた。
  アノールの地域的根絶に向けた基本的な考え方は次のようにまとめられた。@非分布域への拡散防止を最優先事項とすべきである。A全域防除ではなく地域的な防除を基本とすべきである。B捕獲に先立つ遮断が効果的である。C捕獲と遮断の手法開発が重要である。D地域特性を考慮し順応的に防除を進めるべきである。
  以上の結果は、環境省が実施する「小笠原地域自然再生事業」及び「小笠原国立公園特定外来生物重点防除事業」等に活用された。本研究で提案した手法は、今後海洋島における侵略的な外来生物の防除について立案、実行する際に応用可能である。