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[キーワード] 遺伝子、系統、人工繁殖、保全、陸産貝類

[F-051 脆弱な海洋島をモデルとした外来種の生物多様性への影響とその緩和に関する研究]

(3)固有陸産貝類の系統保存に関する研究[PDF](472KB)

 東北大学大学院生命科学研究科

千葉聡

<研究協力機関>

 

自然環境研究センター

森英章

東北大学大学院生命科学研究科

和田慎一郎

東北大学大学院生命科学研究科

木村一貴

University of Nottingham

Angus Davison

  [平成17〜21年度合計予算額] 21,900千円(うち、平成21年度予算額 4,576千円)
※予算額は、間接経費を含む。

[要旨]

  絶滅が危惧される小笠原固有陸産貝類の系統保存技術の確立を目的として、主要な固有種の生活史の詳細を解明し、カタマイマイ属やオガサワラヤマキサゴ属などの人工繁殖の手法を確立した。系統保存の単位として何を用いるのが妥当かを判断するため、ミトコンドリアDNAの解析を行った結果、カタマイマイ属では種の区分と分子系統が必ずしも一致せず、またノミガイ類やキビオカチグサ類のような微小種では遺伝的に大きく分化した隠ぺい種が多数含まれていることが明らかになった。以上の結果から、種に基づく系統保存は固有陸産貝類では不適切であること、地域と単系統性を考慮した系統保存を考える必要があることを示した。次に将来的な保護区設定に必要な情報を得るため、カタマイマイ属の地域集団ごとにマイクロサテライトDNAの分析を行った結果、ほとんどの地域で十分な遺伝的多様性が維持されていること、また0.3km2程度の面積があれば、極端に大きな環境変化が無い限り、カタマイマイ類の個体群は十分な遺伝的変異を有し、長期にわたり維持することが可能であることが分かった。系統保存の実施を含めた陸産貝類の保全計画を検討するため、小笠原における陸産貝類の現況把握を行った結果、多種の未記載種の存在を見出したほか、従来絶滅したと考えられていた多くの種を再発見した。兄島と母島の陸産貝類相の詳細を解明し、陸産貝類の多様性に影響を及ぼしている要因や、最近の個体群密度の減少や絶滅をもたらしている要因を推定し、母島では貝食性プラナリアのほか未知の土壌生物が陸貝群集の劣化に関与している可能性が高いこと、兄島ではクマネズミが急激な陸貝個体群の減少をもたらしたことを示した。また外来植物は必ずしも常に陸産貝類の脅威となるとは限らず、外来植物が在来陸貝を外来捕食者の攻撃から守る役割を果たす場合もあることを見出した。これらの知見に基づき、保全上重要な地域の特定と今後の固有陸産貝類の保全のためのアクションプランを示した。