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[キーワード] 外来種、ココポーマアカフジツボ、タテジマフジツボ類、キタアメリカフジツボ、ズージャンフジツボ

[D-072 大型船舶のバラスト水・船体付着で越境移動する海洋生物の動態把握と定着の早期検出]

(5)分子マーカーを利用したフジツボ類の起源・移動経路の解明に関する研究[PDF](526KB)

 千葉大学大学院理学研究科 地球生命圏科学専攻地球科学コース

山口 寿之

  [平成19〜21年度合計予算額] 14,560千円(うち、平成21年度予算額 4,485千円)
※予算額は、間接経費を含む。

[要旨]

 大西洋で広く外来種として知られていたココポーマアカフジツボMegabalanus coccopoma(Darwin)が日本国内にてオーストラリアと日本との間の鉄鉱石運搬船に付着を初めて確認した。本種は原産国パナマ以外で太平洋に初めてとなるオーストラリア・シドニーおよび日本国内各地にその分布を確認し、そのことを国際誌に報告した。日本国内、パナマ、ブラジル・リオデジャネイロ、シドニーおよび日豪間の鉄鉱石運搬船に付着した集団のミトコンドリアDNA COI BF2-BR2遺伝子の塩基配列は、遠隔地間にも関わらず高い遺伝的類似性(遺伝的差異4%以下程度)を示し、遠隔地の集団間での遺伝子交流の存在を推定させた。本種が大型船舶の船底に大量に付着し、かつ頻繁に遠隔地に運ばれ、そこで遺伝子交流していると推定した。同様に外来種タテジマフジツボにも遠隔地集団間で高い遺伝的類似性が見い出された。
 キタアメリカフジツボBalanus glandulaのmtDNA COI遺伝子の遺伝的構造(3つのハプロタイプの頻度)解析から日本国内に移入した集団は米国・カナダ国境付近の北米西岸の集団が船によって運び込まれたことを明らかにした。
 ズージャンフジツボBalanus zhujianensisを本研究で初めて外来種と認識した。また分子生物学的特徴からそれらは日本集団、インドネシア集団とそれらの混合集団とに区分され、さらに西太平洋の集団を解析することにより、日本集団の起源を明らかにすることができる。
 また外来種が日本の多くの港湾に知られるようになり、歴史的なフジツボ類を含む沿岸生物相に大きな生態学的な変化を与えはじめていることも明らかになった。