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[キーワード] カイアシ類、導入、中国、サンフランシスコ湾、mtDNA

[D-072 大型船舶のバラスト水・船体付着で越境移動する海洋生物の動態把握と定着の早期検出]

(3)バラスト水による海産動物の導入・定着に関する研究[PDF](529KB)

 広島大学大学院生物圏科学研究科

大塚 攻

 <研究協力機関>

 

 広島大学大学院生物圏科学研究科

下埜 敬紀

 高知大学総合研究教育センター

上田 拓史

広島大学大学院教育学研究科

富川 光

 東京海洋大学

石丸 隆

(株)水土舎

伊東 宏

カナダUniversity of British Columbia

山口 愛果

中華人民共和国 Wenzhou Medical College

Changjiang Huang・Xu Shang

アメリカ合衆国 San Francisco State University

William J. Kimmerer

アメリカ合衆国 University of Washington

Jeffrey R. Cordell

アメリカ合衆国 Smithsonian Institution

T. Chad Walter

 大韓民国 Chonnam National University

Ho Young Soh

  [平成19〜21年度合計予算額] 14,365千円(うち、平成21年度予算額 4,290千円)
※予算額は、間接経費を含む。

[要旨]

 サンフランシスコ湾(SFB)に導入された東アジア原産カイアシ類の潜在的導入元である中国南部厦門及び温州の汽水域において浮遊性カイアシ類の分布を調査した。本汽水域の表面塩分の範囲は約1.20であった。50種が出現し,主要種において塩分10.20及び5.10の間には顕著な群集組成の相違があった。SFBに導入された肉食性2種Acartiella sinensis, Tortanus dextrilobatusが本水域で確認されたが、塩分1.10に分布の中心があった。一方、同じ塩分範囲に多産する粒子食者Acartia ohtsukai, A. spinicauda, Pseudodiaptomus poplesia, Mesocyclops aspericornisは世界のいずれからも移入種としての報告はない。また、日本各地の国際貿易港でカイアシ類相を調査したが、外来種の出現は確認できなかった。このことは貿易統計や生物地理によってある程度の説明が可能である。SFBに定着している東アジア原産カイアシ類3種Pseudodiaptomus marinus, Sinocalanus doerrii, Acartiella sinensis及びオレゴン州、ワシントン州に定着している東アジア産Pseudodiaptomus inopinusの導入元をピンポイントで探索するためにmtDNAを用いて、合衆国と日本、韓国、中国の個体群間で遺伝子を比較した。P. marinusにおいては、SFBと遺伝的に類縁があったのは東京湾、大阪港などの個体群であった。一方、韓国南部の個体群は遺伝的に他海域とは異なっていたが種内変異内での差と考えられるのに対して、中国の個体群は本種と近縁の未記載種であることが遺伝的、形態的に確認された。S. doerrii, A. sinensisでは、SFBと中国の個体群間で多くの個体が一つのハプロタイプを共有していた。P. inopinusについては合衆国の個体群の遺伝子解析ができなかったが、東アジアにおいては隠蔽的複数種の存在が指摘された。