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[キーワード] 有害植物プランクトン、付着性微細藻、越境移動、リアルタイムPCR、Chattonella

[D-072 大型船舶のバラスト水・船体付着で越境移動する海洋生物の動態把握と定着の早期検出]

(2)有害植物プランクトン移入種の定着・拡散とバラストタンク内堆積物の動態に関する研究[PDF](528KB)

 独立行政法人国立環境研究所
生物圏環境研究領域 微生物生態研究室

河地正伸・出村幹英

 化学環境研究領域 動態化学研究室

功刀正行

 <研究協力機関>

 

日本郵船 安全環境グループ

舟山純・前田君丈

  [平成19〜21年度合計予算額] 34,804千円(うち、平成19年度予算額 10,884千円)
※予算額は、間接経費を含む。

[要旨]

 日豪航路に就航するバラ積み船「A」を対象として、バラストタンク内試料と船体付着試料の調査を行った。バラストタンク内試料からは、有害種4種を含む24種のプランクトン性種が確認され、船体付着試料からは熱帯・亜熱帯性種を含む28種の付着性種が確認された。両媒体の共通種は、一部のシアノバクテリアと珪藻種のみであった。日本寄港地から確認された48種(有害種13種)のうち、18種(有害種4種)はバラストタンクで検出された種と共通した。船体付着試料から有害種は検出されなかったが、有毒性種を多く含むことが知られるシアノバクテリアを対象として、DGGE解析と主要バンドのDNA配列決定を行い、うち77配列をジーンバンクに登録した。バラストタンク試料は生物密度が希薄で、非生物粒子の占める割合が高く、固定・培養試料で確認できる植物プランクトン種は限られた。そこで越境移動リスクの高い有害植物プランクトン種(Chattonella spp., Heterosigma akashiwo, Alexandrium spp., Pseudonitzschia spp.の4種)を対象として、タンク内試料にリアルタイムPCR法を適用した結果、いずれの種も航海後のバラストタンク内堆積物から検出され、リバラストが行われることで、細胞数が激減する一方で、プランクトン種によって排出のされやすさに違いのあること、そしてAlexandrium spp.とPseudonitzschia spp.は、豪州寄港地で実際に排出されていることを確認できた。Chattonellaは本調査で初めてバラストタンク内から検出され、培養チャンバー実験でも2ヶ月の航海後の生存率が航海前とほとんど変わらないことから、船舶を介した移動・拡散の可能性が示唆された。Chattonellaを対象としてマイクロサテライトマーカーによる集団解析や自然試料からの多型検出についても検討した。リアルタイムPCR法は、バラストタンク内から特定生物を高感度かつ高精度に検出でき、試料の収集、処理の標準プロトコールを整備することで専門知識がなくても対象生物を検出できることから、バラスト水を介した海洋生物の動態把握や定着の初期過程の解析等に有効な手段となることが期待される。