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[キーワード] 船体付着、海藻類、遺伝子マーカー、防汚剤、越境移動

[D-072 大型船舶のバラスト水・船体付着で越境移動する海洋生物の動態把握と定着の早期検出]

(1)海藻類の移入・定着の現況把握と起源・拡散経路の推定、船体付着防止策の検討と環境に及ぼす影響評価[PDF](501KB)

 神戸大学 自然科学系先端融合研究環 内海域環境教育研究センター

川井浩史・羽生田岳昭

 神戸大学 海事科学研究科 海事科学専攻

岡村秀雄

 <研究協力機関>

 

神戸大学 理学部生物学科

野澤敬

 神戸市環境保健研究所

八木正博

  [平成19〜21年度合計予算額] 49,026千円(うち、平成21年度予算額 14,836千円)
※予算額は、間接経費を含む。

[要旨]

  近年ヨーロッパや北米への移入が示唆されていたアジア原産の緑藻アナアオサは、ニュージーランドでは在来種であるとの結論が示されており、疑問が残っていた。そこで世界各地の集団につき遺伝子解析を行った結果、極東アジアを自生地とし、人為移入により世界各地に急速に拡散したことが確認された。欧州原産の褐藻ヒラムチモは船舶を介して日本に移入したとされてきたが、世界各地の集団について遺伝子解析を行った結果、日本周辺でのみ高い遺伝的多様性が認められ、定説に反して日本の在来種であると結論した。一方、東アジア原産の近縁種ムチモは、同じく遺伝子による解析から、津軽海峡に見られる無性繁殖集団が米国太平洋沿岸に移入したことを示した。移入付着生物検出手法の標準化を目指して、PICES WG-21において提案されている底生生物付着板を大阪湾の2カ所に設置し、モニタリングを実施した結果、底生生物付着基質としての有効性が検証された。プレート上の環境試料から遺伝子マーカーによる同定を行う手法の開発を目指して、フジツボ類、アオサ類について最低限のPCRと塩基配列決定により移入リスクが高い種の同定を行える18S rDNA部位を明らかにし、DGGE法による分離の条件検討を行った。
  日豪間の大型運搬船を対象に、船体後部の高頻度生物付着領域に2種類のバイオサイドフリー船底塗料をパッチ塗装し、通常塗料との付着生物の違いについてモニタリング調査を実施し、また付着藻類の組成を培養により比較した。その結果いずれの試験塗料表面にも肉眼で確認できる大きさの付着生物は認められなかったものの、微細藻類の付着が視認できバイオサイドフリー塗料区には珪藻類やシオミドロ属藻類が、バイオサイド塗料区では緑藻類の付着が多く見られ、バイオサイドフリー塗料の使用増加により移入藻類の多様性が変化する可能性が示された。パッチ塗装した2種類の塗料および従来からのバイオサイド塗料を用いて45日間の溶出試験を実施し、バイオアッセイを行ったところ、バイオサイドフリー塗料からの溶出液には毒性は認められなかった。