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[キーワード] 短波海洋レーダー、Lagrangian Coherent Structure、Finite-time Lyapunov Exponent、渦構造、人工衛星画像

[D−071 市民と研究者が協働する東シナ海沿岸における海岸漂着ゴミ予報実験]

(3)短波海洋レーダーによるゴミ収束域の特定と海洋数値モデルの精度検証[PDF](438KB)

 国土技術政策総合研究所
沿岸海洋研究部 沿岸域システム研究室

日向博文・片岡智哉(平成21年度)

  [平成19〜21年度合計予算額]59,068千円(うち、平成21年度予算額 20,977千円)
※予算額は、間接経費を含む。

[要旨]

 HFレーダー観測と力学系理論を組み合わせたゴミ集積海域特定方法を提案した。まず、HFレーダー観測結果を利用してFinite-time Lyapunov Exponent (FTLE)を計算し、Lagrangian Coherent Structure(LCS)のマッピングを行った。続いてLCSの発生位置と渦度分布、人工衛星画像による表層水温(SST)・クロロフィルa(chl.a)濃度分布との比較、さらには、空撮による漂流ゴミ分布との比較を行い、本提案方法の精度検証や物理的根拠を考察した。これらの比較から、1)渦度極大域の周辺に顕著なLCSが発生すること、2)LCSの位置は基本的にはSST/chl.aフロントの位置と対応しているが、カオス的混合過程よりも乱流的な混合過程が支配的であると考えられる海域に位置するフロントは検出できないこと、3)風圧流の影響を受けない漂流ゴミの集積域はLCSによって精度良く予測できる可能性が高いこと、4)五島列島西岸沖ではLCSの発生には明確な季節変動があり、傾圧不安定によると推測される渦生成が活発な秋季に顕著なLCSが発生することを示した。これら全て実測に基づく一連の成果は分担者らの知る限りこれまでに前例がない。また、GPS漂流ブイ追跡実験から、流れ場が一様な場合にはHFレーダーによって実用的な精度の範囲内で漂流物の追跡が可能なこと、水平循環流が隣り合う双曲点付近における漂流物の追跡には注意が必要なことも示した。