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[キーワード] 土壌呼吸、インキュベーション、土壌微生物、温暖化、日本の森林生態系土壌

[B-073 土壌呼吸に及ぼす温暖化影響の実験的評価]

(2)異なる生態系における土壌微生物活性の変動メカニズムの解明[PDF](467KB)

 国立大学法人静岡大学農学部
環境森林科学科 森林圏環境学講座

角張嘉孝・王権・水永博己

 <研究協力者>

青木周司

 静岡大学 環境森林科学科 森林圏環境学講座

楢本正明・酒井啓充・加藤敏行・西浦陽子、大類光平・藤岡隆基・荒牧真以

  [平成19〜21年度合計予算額] 30,500千円(うち、平成21年度予算額 10,000千円)
※予算額は、間接経費を含む。

[要旨]

 北海道から九州・沖縄まで、日本の主要な森林生態系のうち、亜寒帯性常緑針葉樹林、落葉性針葉樹林、温帯性落葉広葉樹林、暖帯性常緑広葉樹林、亜熱帯広葉樹林を対象に、温暖化環境下で土壌呼吸が土壌微生物によってどのような影響を受ける可能性があるかについて解析するため、土壌サンプルを採取しインキュベーション実験および苗場山ブナ林の標高1500m と900m において(高温域への移動)実験を行った。
 予備実験として、自動開閉式装置により土壌呼吸を測定している天塩、富士吉田、つくばおよび苗場サイトから土壌試料を土層ごとに採取した。その際、土層を破壊的に採取する方法(仮に破壊法)と非破壊的に採取する二つの方法に依った。破壊法では採取後風乾し2mm の篩によって根などを除去した後実験に供された。実験の条件は土壌水分(W1、W2、W3)の3 段階、温度はT1(10-25℃/1 日)、T2(10-40℃/1 日),T3(10-38℃/4℃ステップ/7 日)、T4(10-40℃/2 ヶ月)の4 段階、対象物はL0(リター)、L1(リター層をのぞく0-10cm)、L2(10-20cm)、L3(20-30cm)に区分された。破壊法と非破壊法の比較では、10.30℃の間では両者の土壌呼吸速度は同様の傾向を示したが、破壊法が非破壊法に比べて高温ほど高くなった。水分条件では最も過湿な条件(W3)の呼吸速度が高い傾向であった。サイト間の比較を行うと、土壌呼吸速度は全炭素、微生物バイオマス量に影響を受けることがわかった。
 本実験として、全国72ヵ所から土壌を非破壊的な方法で採取し、採取土壌試料を低温域、中温域、高温域のグループに分け、異なる一定温度による加温(以下、温度負荷と呼ぶ)を与えて土壌呼吸速度を測定した。その結果常緑広葉樹林、針葉樹林に比較して落葉広葉樹林の土壌呼吸速度が高いこと、また緯度が高いほど、標高が高いほど土壌呼吸速度が高いことがわかった。ヒーター等による「温暖化操作実験」によっても土壌呼吸の目立った増加が見られず、むしろ減少し、いわゆる「フィードバック効果」が見られた。