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[キーワード] 土壌呼吸、温暖化、多点自動連続測定チャンバー、解析プログラム、データベース

[B-073 土壌呼吸に及ぼす温暖化影響の実験的評価]

(1)温暖化に伴う土壌呼吸速度の地域的特性の解明

2)データベースの構築及び土壌呼吸の自動連続測定[PDF](463KB)

 北海道大学 北方生物圏フィールド科学センター

高木健太郎

  [平成19〜21年度合計予算額] 9,875千円(うち、平成21年度予算額 5,000千円)
※予算額は、間接経費を含む。

[要旨]

  北海道大学天塩研究林内の針広混交林において土壌を加温する野外操作実験を行い、対照区と処理区において土壌呼吸速度を自動連続測定し、温暖化が土壌呼吸速度に与える影響について明らかにした。また、全国複数地点におけるデータ処理・土壌呼吸速度解析が可能なプログラムの開発を行い、得られたデータを登録するデータベースの構築を行った。5cm深地温3℃上昇の温暖化処理期間(無雪期のみ)の正味600日・20ヶ月の結果から、総土壌呼吸速度のうち、微生物呼吸が占める割合は71%であり、温暖化処理区において、対照区よりも73%微生物呼吸速度が増加することが明らかになった。温暖化処理区における温度上昇に伴う土壌呼吸速度の増加傾向(Q10値:2.75)は対照区(2.80)と大きな変化はなく、一方基底呼吸速度(0℃における土壌呼吸速度)が温暖化処理により増加することが明らかになった(温暖化区と対照区でそれぞれ、1.21および0.93μmol m-2 s-1)。温暖化処理は地温−土壌呼吸速度の関係式のQ10値に大きな影響を与えず、基底土壌呼吸速度を増加させる傾向にあり、加えて地温の増加によって、土壌呼吸速度が増加することが明らかになった。
  有機質に富む土壌を持つ本調査地では、温暖化によって、大量のCO2を大気に放出し、温暖化処理後3年ではその傾向は収まらないことが明らかになった。また基底呼吸速度が温暖化処理により増加することから、現状の気候環境下の季節変化から得られた温度―土壌呼吸速度の関係式を将来予測に用いる場合、温暖化環境下における土壌呼吸速度を過小評価する可能性が示唆された。すべての調査区において、土壌呼吸速度と土壌水分の間には明瞭な関係が認められず、本調査地では土壌水分は土壌呼吸速度の変動に大きな影響を与えていないと考えられた。開発されたプログラムにより長期のデータを短時間で解析することが可能となった。データ品質の判別のために採用した判別式は、異常データや測器トラブルの検出に有用であることが明らかになった。