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[キーワード] 熱帯、対流圏界面、水蒸気、オゾン、水蒸気除去過程

[B-073 土壌呼吸に及ぼす温暖化影響の実験的評価]

(1)温暖化に伴う土壌呼吸速度の地域的特性の解明

1)野外温暖化操作実験[PDF](448KB)

 独立行政法人国立環境研究所
地球環境研究センター 炭素循環研究室

梁 乃申・向井人史・高橋善幸

 <研究協力者>

 

 国立環境研究所地球環境研究センター

後藤誠二朗

弘前大学大学院理工学研究科

石田祐宣

宮崎大学農学部田野フィールド

高木正博

広島大学大学院生物圏科学研究科

新川里美・皮 玲・王 新

 静岡大学農学部環境森林科学科

大類光平

  [平成19〜21年度合計予算額] 69,249千円(うち、平成21年度予算額 19,432千円)
※予算額は、間接経費を含む。

[要旨]

  温暖化に伴って我が国のような湿潤な森林土壌が、今まで以上に吸収源として機能するのか、あるいは放出源に転換するのかについて定量的な評価を行うことを目的として、国内の典型的な森林生態系である、最北域の冷温帯針広混交林(北海道大学天塩研究林)、東北地方のミズナラ林(青森県岩木山南山麓)、北陸・甲信地方のブナ林(新潟県苗場山)、関東地方のアカマツ林(国立環境研究所構内)、中国地方のアラカシ優占林(広島大学構内)、および九州地方のスダジイ林(宮崎大学田野フィールド)を対象に、野外での温暖化操作実験を行った。赤外線ヒーターの照射により深さ5cmの土壌温度を2.5oC程度上昇させたプロット(温暖化区)と、温度上昇をさせない自然状態のプロット(対照区)に、マルチ大型自動開閉チャンバー式システムを設置し、土壌呼吸の自動連続測定を行った。土壌微生物呼吸の土壌呼吸全体に占める割合は約65%〜85%と非常に高い割合を占めていた。対照区と比較して、温暖化区における土壌呼吸速度は、岩木山のミズナラ林では昇温1°Cあたり平均4.5%、苗場山のブナ林では昇温1°Cあたり平均5.1%、つくばのアカマツ林では昇温1°Cあたり平均5.1%、広島のアラカシ優占林では昇温1°Cあたり平均5.4%、そして宮崎のスダジイ林では昇温1°Cあたり平均11.3%増加した(注1)。但し、複数年観測を行った場合では、実験1年目が最も昇温効果は高く、2年目そして3年目と連続して観測を行うにつれ、昇温効果は低下していく傾向が見られた。この原因としては、温暖化操作による土壌有機物の速い消費等が考えられる。土壌呼吸に占める微生物呼吸の割合は非常に高く、また野外実験において、温度上昇とともに確実に微生物呼吸が増加する事を明らかにした。
  今後さらに、観測を継続していくことにより、長期に渡る温暖化操作が土壌呼吸や土壌環境に与える影響を明らかにすれば、森林の土壌が温暖化によりどのような影響を受けるかをより詳細に解明することができる。
(注1 天塩の針広混交林の詳細結果はサブテーマ1−2 を参考する。)