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[キーワード] オゾン層、フロン、ハロン、化学気候モデル、地球温暖化

[A-071 成層圏プロセスの長期変化の検出とオゾン層変動予測の不確実性評価に関する研究]

(3)オゾン層変動の再現性と将来予測精度評価に関する研究[PDF](413KB)

 独立行政法人国立環境研究所

 

 大気圏環境研究領域

今村隆史

 大気圏環境研究領域 大気物理研究室

秋吉英治

 大気圏環境研究領域 大気物理研究室

杉田考史

<研究協力者>

 

 国立環境研究所 大気物理研究室

中村 哲

 国立環境研究所 大気物理研究室

山下陽介

  [平成19〜21年度合計予算額]105,742千円(うち、平成21年度予算額 34,456千円)
※予算額は、間接経費を含む。

[要旨]

オゾン層将来予測モデル(化学気候モデル)を開発し、1980年から現在までのオゾン量と気温、南極渦崩壊時期などのオゾン量に関係した気象要素についての再現性を調べた。その結果、オゾン全量やオゾンホールについては、その経年変動や季節変動をほぼ再現していることがわかった。また、オゾンホールがオゾンホールの場である南極渦の崩壊時期を遅らせ、南極上空でオゾンが破壊される期間を拡大していた可能性を見いだした。開発を行った化学気候モデルと、ハロゲン濃度および温室効果ガス濃度の将来シナリオとを使って、1980年〜2100年の期間についてのオゾン層および成層圏の将来予測を行った。オゾン層は今後大気中のハロゲン濃度の減少とともに回復することが計算され、オゾンホールは2050年以降
に消滅することがわかった。また、温室効果ガスのオゾン層への影響(オゾン層回復時期への影響)を調べるため、温室効果ガス濃度と海表面温度を固定した気候固定実験を行った。その結果、温室効果ガスの増加により、オゾンホール回復時期が10年以上遅れることがわかった。さらに、
オゾン層の回復時期は、オゾン化学の高度による違いやオゾン輸送の緯度による違いを反映して、緯度・高度によって異なることがわかった。特に熱帯では、オゾン量は2050〜2060年頃に一旦1980年レベルに近づくが、その後また減少するという結果が得られた。これは、温室効果ガスの増加によって熱帯域の上昇流が将来強化されることによる。このように下部成層圏のオゾン量は輸送の影響を複雑に受けるため、オゾン層回復時期予測の精度を上げるためには、オゾン輸送を担う大気循環の変動に係わる様々な因子(プラネタリー波、重力波、積雲対流など)の気候変化のメカニズムを探ることが必要であることがわかった。また、現在の化学気候モデルで特に目立っていた熱帯圏界面付近の低温バイアスを、新しく開発している化学気候モデルでは除去することができた。今後はこの新化学気候モデルによってオゾン層回復のメカニズムを探っていく。