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[C-3 東アジアにおける酸性雨原因物質排出制御手法の開発と環境への影響評価に関する研究]

(2)酸性雨原因物質排出制御の実施に伴う環境影響評価に関する研究

��酸性雨による材料への影響を尺度とした環境評価手法の開発に関する研究


[研究代表者]

 

国立環境研究所大気圏環境部大気反応研究室

●畠山史郎

[環境庁国立環境研究所]

大気圏環境部大気反応研究室

●畠山史郎

(委託先) 社団法人 大気環境学会

●溝口次夫、前田泰昭、辻野喜夫、古明地哲人


[平成9〜11年度合計額]

7,444千円
(平成11年度予算額 2,522千円)


[要旨]

 酸性雨による材料への影響を尺度とした環境評価手法を開発するため、1)東アジア地域での大気環境下での材料暴露調査、2)人工酸性雨および酸性ガスによる材料暴露試験、3)歴史的建造物の環境汚染履歴調査、4)環境評価手法の検討を実施した。
 1)東アジア地域での大気環境下での材料暴露調査   大気汚染レベルおよび気象条件の異なる日本(13地点)、中国(8地点)および韓国(2地点)において、青銅、銅、炭素鋼、大理石、杉、檜、漆の暴露試験を実施し、同時に気象要素、乾性降下物、湿性降下物等の環境因子を測定した。銅は東アジア地域において長期間の暴露試験にも直線性を示し、複合汚染指標として有効であった。重慶での銅の腐食速度の経年変化は、屋内暴露では1993年からSO2ガス濃度の低下とともに減少する傾向にあり、屋外暴露では雨水中の硫酸イオン濃度の変化と同じ様な挙動を示した。日本では屋外・屋内暴露ともほぼ一定であったが、韓国の大田では屋外・屋内暴露とも腐食量は増加傾向にあった。薄膜X線回折による腐食生成物の分析の結果、中国の重慶など重汚染地域の試料からは、屋外・屋内暴露とも酸化第一銅(Cu2O)、塩基性硫酸銅(Brochantite)の強いピークが検出された。一方、日本の都市型汚染地域でも、屋外暴露では同様にCu2O、塩基性硫酸銅のピークを認めたが、雨を遮断した屋内暴露ではさらに水に溶けやすい塩基性硝酸銅が検出された。回帰分析の結果、屋外の銅の腐食量の増加には、気温や湿度の上昇、大気中のSO2ガスや海塩粒子の濃度、雨水中の硫酸、塩素イオン濃度やpH値の低下などが大きく関与していること。また、銅の腐食量には、S量、Cl量、硝酸塩の沈着が大きく寄与していること。S量は、雨水から供給されるよりも、主として大気中のSO2ガスが湿った銅表面に吸収・濃縮され、硫酸塩として沈着することがわかった。
 2)人工酸性雨および酸性ガスによる腐食試験   ①酸性水溶液による銅材料の溶出試験、   ②人工酸性雨によるサイクル試験、   ③酸性ガスによる腐食試験の3試験を種々の条件下で行い、その結果を比較検討した。人工酸性雨には、重慶と大阪との雨が調製され、降雨プログラムに従って繰り返し噴霧された。腐食加速試験による銅表面には、両方の雨とも、Cu2Oの強いピークを認めたが、塩基性硫酸銅、塩基性硝酸銅は共に検出されなかった。腐食量はpH値の低下とともに大きく増加した。また、SO2+NO2+O3によるガス腐食試験(RH:90%,暴露期間:5days)では、銅表面にCu2Oと塩基性硝酸銅を生成した。O3による腐食の促進効果は大きかった。本試験では、塩基性硫酸銅は検出されなかった。それはSO2の酸化速度が緩慢なため、5日間程度の試験では、銅塩類を生成するのに十分な濃度のSO4が生成されなかったためだと思われる(偶然、ガス試験機の壁面に付着した濃い濃度のH2SO4に接触した銅試料には、塩基性硫酸銅が生成していた)。化学量論的には、重慶の雨に含まれている程度の硫酸イオン濃度では、塩基性硫酸銅の生成はありえず、湿った銅試料表面へのSO2ガスの吸収・濃縮によって、高濃度の硫酸が生成され、塩基性硫酸銅の形成が促進される。
 3)歴史的建造物の環境汚染履歴調査   50〜300年を経た建造物から銅試料を採取した。北九州や堺市のように工業地帯に隣接した地域から採取された試料には、SO2が高濃度であった時代に形成されたと思われる塩基性硫酸銅(Antlerite)が検出された。300年前の試料は、緻密な塩基性硫酸銅(Brochantite)の層で覆われていた。近年は、窒素酸化物による大気汚染により、雨に溶けやすい塩基性硝酸銅塩の生成が多くなっている。
 4)環境評価手法の検討   多変量解析によって、物的影響関数を定め、物的影響のモデル化を図り、地域環境特性、汚染物質特性、時間特性を考慮した環境評価手法を検討した。


[キーワード]

 東アジア、酸性降下物、材料腐食、環境評価、塩基性硫酸銅、塩基性硝酸銅