検索画面に戻る Go Research



(977Kb)

[B−16 地球温暖化抑制のためのCH4、N2Oの対策技術開発と評価に関する研究]

(3)CH4,N2Oの抑制のための生活系排水のバイオ・エコエンジニアリングシステムによる対策技術


[研究代表者]

国立環境研究所地域環境研究グループ 開発途上国 環境改善(水質)研究チーム

●稲森悠平

[環境庁国立環境研究所]

 

地域環境研究グループ 開発途上国環境改善(水質)研究チーム

●稲森悠平、水落元之

(委託先)

 

東北大学 工学研究科

●西村 修

東北学院大学 工学部

●遠藤銀朗

筑波大学 応用生物化学系

●松村正利


[平成10-11年度合計予算額]

41,090千円

(平成11年度予算額 20,094千円)


[要旨]

 本研究では、CH4,N2Oの生活排水系からの発生抑制のための対策技術開発と評価に関する検討を行った。生物学的窒素除去の単位プロセスとしての硝化反応においては、水温の低下、流入窒素負荷の増大に伴い硝化能の低下、N2O発生速度および転換率の増大が生じ、特に低水温時において窒素負荷の影響が大きく現れることがわかった。また、硝化率が十分に高く維持されるようにすれば、硝化過程におけるN2O発生も同時に抑制可能であることがわかった。
 有用硝化脱窒細菌 A.faecalis の包括固定化担体による間欠ばっ気法への導入により、N2O転換率を増大させることなく硝化能および窒素除去能の双方の向上の達成の可能性が明らかとなった。また、既存活性汚泥反応槽と三相流動層反応槽の窒素除去およびN2Oを放出特性を評価した結果、A.faecalis固定化担体の充填量の多い三相流動層反応槽のN2O発生量は1/5に低下し、窒素除去率は平均約5%高くなることがわかった。
 銅を含有するN2O還元酵素の窒素還元に及ぼす影響は著しく、3ppm程度の添加によって、発生するN2O濃度は高速度脱窒下においても3ppm程度に抑制された。また、ポリエチレンイミンで架橋された多孔性セルロース担体の銅吸着能力は優れており、この特性は今後銅の直接添加を嫌う地下水の硝酸除去に新たな手法になるものと考えられた。
 豚舎排水処理過程におけるN2O発生原単位は下水処理過程における値に比べて大きくなったが、これは豚舎排水処理の過程で一時的にNO2-Nが蓄積するためであることが示唆された。すなわち排水処理の過程でN2Oの生成を抑制するためにはNO2-Nを蓄積させないことが重要であり、適切な嫌気好気時間の設定等による硝化と脱窒のバランスのよい進行が有効であると考えられた。
 人為的汚染を受ける湿地帯からのCH4およびN2Oの放出量は大きな季節変動が観察され、これらはCH4酸化あるいは植生による吸収活性、脱窒反応や窒素化合物吸収等の、湿地生態系における微生物や植物による有機物や窒素代謝の変動等に起因するものと考えられた。また、湿地底泥等から得られたCH4酸化細菌と脱窒細菌の集積培養を用いた室内実験によって、湿地微生物生態系の活用は、人為的汚染を受ける湿地からのこれらのガスの削減技術となる可能性が示された。
 嫌気ろ床・土壌トレンチの処理水の水質は日本の建設省と厚生省等の再利用水の水質基準を十分に満足しており、再利用水としてのリサイクルの期待できることがわかった。また、通気を行うことによりCH4およびN2Oの発生量を非通気の場合の約半分に抑制可能であり、通気条件の適正化によりこれらのガスの抑制効果がさらに向上する可能性が示唆された。


[キーワード]

 温室効果ガス抑制、メタン(CH4)、亜酸化窒素(N2O)、バイオエンジニアリング、エコエンジニアリング