研究成果報告書 J98E0120.HTM

検索画面に戻る Go Research



(713KB)

[E−1.熱帯環境林保続のための指標の策定に関する研究]

(2)撹乱環境下における熱帯稚樹の応答選択に関する研究


[研究代表者]

 

環境庁国立環境研究所

●奥田敏統

[環境庁国立環境研究所]

 

地球環境研究グループ森林減少・砂漠化チーム

●奥田敏統、唐艶鴻、足立直樹、梁乃申(科学技術特別研究員)、横田岳人(現奈良女子大学)、山田俊弘(現熊本県立大学)

マレーシアプトラ大学環境科学部

●MuhamadAwang,AhmadMakmom

(委託先)

 

京都大学農学部

●武田博清

奈良女子大学理学部

●古川昭雄

信州大学理学部

●佐藤利幸


[平成8〜10年度合計予算額]

78,710千円

(平成10年度予算額29,788千円)


[要旨]

 本研究では撹乱環境下における熱帯稚樹の応答反応を把握するため、稚樹の移植から葉の生理生態および生態特徴までの幅広い実験と測定を行った。まず、熱帯林を構成する21種の稚樹を放棄ゴム園へ移植し、その後の生長を上層木がない裸地区と上層木によって被陰された被陰区でと比較した。稚樹の生残率は概して被陰区で高かったが、被陰区と裸地区との間で差が見られない樹種、または裸地区の方が高い生残率を示す樹種も見られた。また、着生シダの種多様度を半島マレーシアの人為的撹乱を受けた森林と天然林で調査した。その結果、着生シダの種多様度は人為的撹乱を表す指標となる可能性が示唆された。一方、熱帯林内の不均質な微環境下での稚樹の生理的反応を明らかにする目的で、稚樹の生理生態と形態特性については以下のような研究を行った。まず、Shorea parvifoliaを対象に林内の光や湿度環境が光合成、蒸散などの生理反応に及ぼす影響について測定を行った。その結果、空気中の湿度は光合成反応、とくに光合成誘導反応に大きな影響を及ぼすことが明らかになった。また、異なる生育段階のDipterocarpussublamellatusについて葉の光合成特性と形態特徴を測定した。その結果、葉の生理特性と形態特徴は、生育段階に応じて大きく変化することがわかった。さらに、東南アジアの熱帯林で普遍的に見られる先駆種、Macaranga giganteについて展葉過程と樹冠の受光効率の関係について解析し、その結果古い葉ほど葉柄の長さと角度が大きくなり、葉柄の長さの成長と角度を調節することで、樹冠内の葉を効率よく配置し、相互被陰を回避していることが明らかになった。さらに、熱帯林の林内二酸化炭素濃度の垂直分布を経時的に測定することを試み、森林内の二酸化炭素ガスの移動実態の解明を目指した。


[キーワード]

撹乱林、稚樹、光合成、成長、種多様度