研究成果報告書 J98D0122.HTM

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[D−1.勃海・東シナ海における河川経由の環境負荷が海洋生態系に与える影響評価手法に関する研究]

(2)汚濁物質が海洋生態系・物質循環に与える潜在的影響の評価手法に関する研究

��海洋生態系における微生物多様性解析手法の開発に関する研究


[研究代表者]

 

国立環境研究所生物圏環境部長

●渡辺信

[環境庁国立環境研究所]

 

生物圏環境部部長

●渡辺信

環境微生物研究室

●広木幹也、河地正伸

水土壌圏環境部水環境質研究室

●内山裕夫


[平成8〜10年度合計予算額]

17,412千円

(平成10年度予算額5,682千円)


[要旨]

 中国の長江では、流域開発を目的として中流域に世界最大級の三峡ダムが建設されており、河口域の東シナ海では、将来的に長江からの流入水の量的、質的変化が予想され、生態系への影響が危惧されている。本研究では、海洋生態系で重要な位置を占める微生物相の多様性を解明することを目的とし、細菌については培養を伴う従前法および分子生物学的手法を用いて、微細藻類については予備培養法と組み合わせた顕微鏡による形態観察とフローサイトメトリー(FCM)法により解析を行った。
 東シナ海における調査サイトごとの塩分濃度の鉛直分布より、長江流入水の影響は河口から約200�匆�合のC3サイトまで及んでいることが明らかとなった。全細菌数とSiO2、NO3、DIP各濃度の相関性から、沿岸域では従属栄養細菌、沖合域低栄養性の細菌が多く存在していることが示唆され、生息する細菌の性質が異なるものと考えられた。
 真正細菌の16SrDNAを標的としたPCR-RFLPにより、C1(長江河口から100�匆�)、C3(200�匆�)、C5(300�匆�)サイトそれぞれの表層、中層、底層の細菌相を比較したところ、各サイトごとに細菌相が異なり、C1サイトは長江からの流入水の影響で異質の細菌相を示し、さらに一表層の細菌相は中層、底層とは異なることが示唆された。
 C1サイト表層試料を、MarineAgar2216を用いて培養した結果、Largecolonygroup(コロニー径4-6��)とTinycolonygroup(1�舒焚�)の細菌が観察され、後者は表層で多く認められた。Biologおよび16SrDNA配列による解析の結果、Largecolonygroupでは、Alteromonasmacleodii、Roseobactergallaeciensisが優占種であり、Tinycolonygroupのほとんどは光合成能を有するRoseobacterlitoralisであったことから、表層に多く存在したものと考えられた。
 C1サイト表層試料のうち、培養で得られたコロニーは全菌数の約7%であったため、次いで、真正細菌16SrDNAのPCRによるライブラリー化および塩基配列解析を行った結果、α-、γ-proteobacteria、C/F/Bgroupを中心とした多様な構成が見いだされ、特にAlteromonasmacleodiiとRosebactergallaeciensisの近縁種は培養法でも多く見いだされたことから、本海域の優占種である


可能性が示唆された。また、本手法では、培養法では得られなかった新奇な細菌群や、培養困難な細菌群の存在も認められた。今後、本研究で得られた塩基配列を基に各菌群に特異的なプローブを作り、現存量、存在比等の微生物多様性変遷を定量的に解析する事が可能となった。FCM法による解析では、前方散乱光(FSC)および側方散乱光(SSC)が小さくオレンジ蛍光(FL2)が相対的に高い粒子群と、前方散乱光(FSC)および側方散乱光(SSC)が比較的大きく、赤色蛍光(FL3)が相対的に高い粒子群の2つのことなる粒子群が認められ、これらの粒子は各々、フィコビリン色素を持つ原核のシアノバクテリアとクロロフィルしか持たない真核の微細藻類であると思われた。シアノバクテリアは河口より離れたサイトで多くB3あるいはB5では10,000cells/ml認められたが、河口に近いκおよびB1サイトでは真核藻類が優占するなど、長江沿岸域から外海にかけて、棲息する微生物の相が異なることが示された。予備培養法では少なくとも4綱に所属する4種類のピコ植物プランクトンを検出できた。これらの種は広範囲に生息するのが認められ、調査海域における基礎生産者としての重要性が示唆された。


[キーワード]

フローサイトメトリー、ピコプランクトン、PCR、16SRNA、系統樹、予備培養、電子顕微鏡