研究成果報告書 J98C0123.HTM

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[C−1.東アジアの環境酸性化物質の物質収支解明のための大気・土壌総合化モデルと国際共同観測に関する研究]

(2)東アジアスケールの国際共同観測による環境酸性化物質の物質収支に関する研究

森林生態系における環境酸性化物質の物質収支とその影響に関する研究


[研究代表者]

 

農林水産省林野庁森林総合研究所企画調整部企画科長

●石塚和裕

[森林総合研究所]

 

森林環境部土壌化学研究室

●阪田国司、高橋正通

東北支所土壌研究室

●相澤州平

四国支所林地保全研究室

●吉永秀一郎

(委託先)

 

東京農工大学農学部

●青木正敏、伊豆田猛、戸塚績(現:江戸川大学)

大学院

●岡崎正規


[平成8〜10年度合計予算額]

46,396千円

(平成10年度予算額15,252千円)


[要旨]

 東アジア地域の森林生態系に及ぼす環境酸性物質の影響を解析し、酸性物質の影響評価手法の開発に資するために、次のことを行った。1)工業化が進行する中国および韓国で、環境酸性化物質の森林生態系への影響について現地調査するとともに、韓国においては土壌の酸緩衝能を評価する。2)韓国ソウル市郊外と日本の東京八王子のアカマツ林流域における物質収支を比較する。3)中国・韓国の植栽樹種を用い、人工的に酸性処理した土壌で苗木の成長特性を調べる。4)土壌型や林相を異にする様々な土壌を用い、森林土壌の窒素無機化および硝酸の生成速度を明らかにする。5)簡易な土壌酸緩衝試験を開発するとともに、有機物分解等に伴う有機酸に対する土壌の緩衝能も調べる。
 結果は1)韓国の工業地帯周辺では降水の酸性化が認められた。一方、中国の重慶市と貴陽市では、降水の酸性化物質濃度は高いが、高いカチオン濃度で中和されていることが観測された。また韓国の土壌は日本の土壌より緩衝能が小さく、影響が顕在化しやすかった。2)八王子の降水は酸性化していたが、降水中の物質は森林流域へ蓄積傾向にあった。一方、韓国では、降水の酸性化は認められなかったが、流域から塩基類が流出し、酸性化傾向にあった。3)土壌の酸性化(土壌の(Ca+Mg+K)/A1モル比の低下)に対し、アカマツ苗は感受性がノルウェースプルース苗より高かった。また馬尾松の感受性は、ノルウェースプルースとほぼ同程度であったが、スギやアカマツに比べて低かった。4)日本の森林土壌の硝酸化成速度は、植生よりも地質条件が決定要因として重要であった。5)キレート作用のあるシュウ酸は、土壌pHの酸性化を伴わずに土壌溶液中のAl濃度を上昇させる可能性があった。
 以上のことから中国、韓国では工業化により酸性化物質負荷量が大きいこと、また、土壌酸性化に対する樹木の感受性は樹種によって異なるので地域に適した臨界負荷量を評価する必要があること、韓国の土壌は緩衝能が弱く、渓流水から塩基の流亡が観測されることが明らかとなった。また森林土壌の酸性化プロセスには硝酸化成と有機酸類の影響が大きいことがわかった。


[キーワード]

小流域物質収支、苗木の耐酸性硝酸化成、中国、韓国