![]() | |
---|---|
![]() |
[研究代表者] |
|
国立環境研究所生物圏環境部 |
●大政謙次 |
[環境庁国立環境研究所] |
|
生物圏環境部 |
●大政謙次、戸部和夫 |
(委託先) |
|
龍谷大学経済学部 |
●増田啓子 |
愛知大学文学部 |
●吉野正敏 |
2,6486千円
(平成10年度予算額8,752千円)
アジア太平洋地域、特にモンスーンアジアにおける地球温暖化とENSOにおける局地植生への影響のデータ収集と解析を行なった。世界中の多くの地域は干ばつや洪水の原因となるエルニーニョ南方振動(ENSO)の挙動が1970年代中期以降、ラニーニャに比べて頻繁に、及びより持続するようになっている。このENSOの挙動が、アジア太平洋地域の陸域における最近の降水量の変動や地上気温の高低の分布パターンに変化をもたらし各地で大きな影響をもたらしている。近年ENSOの観測データも増大し解析の精度が上がってきたことによって、アジア太平洋地域に災害をもたらす異常気象とENSOとを関連づけることが可能となった。エルニーニョ年とラニーニャ年の発生年(季節単位)を選び、ソメイヨシノの開花日の遅速の差を求めた。エルニーニョ年には1〜3月が温暖なため早く開花するが、その正の影響は38°N以南で顕著であった。ラニーニャ年には東アジア全域に負の影響で北ほど偏差が大きく現れた。中国における生物季節については、我が国のソメイヨシノの開花を指標とした遅速の関係を求めた。年平均気温とソメイヨシノの開花を基準として温暖化した場合の中国における生物季節のカレンダーを作成した。
北陸地方の雪害は一般的にはエルニーニョ年にはラニーニャ年より一桁件数が少ない傾向があった。しかし、森林の雪害面積はエルニーニョ年に大となる。これは暖冬には降雪回数は少ないが湿った重い雪が降り、積もるために被害は多くなると考えられる。しかし、これは1970年代のことで、1980年代になると、雪害面積が激減するので、エルニーニョ年とラニーニャ年の間に有意な差は認められなくなる。砂漠のような乾燥地域では、乾燥に対しては耐性があるが、まれに降る雨による洪水による被害が大きい。局地植生とその保全には極めて重要なことである。
温暖化、エルニーニョ、ラニーニャ、異常気象、植物季節