研究成果報告書 J98A0531.HTM

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[A−5.紫外線が生態系に及ぼす影響に関する研究]

(3)紫外線増加が海洋基礎生産量に与える影響に関する研究

�〇膤粟�増加が植物プランクトンと動物プランクトンの相互関係に与える影響の評価に関する研究


[研究代表者]

 

北海道区水産研究所海洋環境部生物環境研究室

●斎藤宏明

水産庁北海道区水産研究所

 

海洋環境部生物環境研究室

●津田敦、葛西広海

(委託先)

 

広島大学生物生産学部

●上真一

[平成8〜10年度合計予算額]

9,305千円


[要旨]

 オゾン層破壊に伴う紫外線放射量の増大は海洋生態系を構成する生物の生産や生残に影響を与えるばかりではなく、植物プランクトンと動物プランクトンの相互間系に変化を及ぼし、海洋生態系に重大な擾乱を与えることが危惧されている。本研究は、紫外線が海洋生態系の重要な構成種である動・植物プランクトンに対する直接的影響および動・植物プランクトンの相互関係へ及ぼす影響の評価を目的として行った。
 海洋のネット動物プランクトンとして最優占するカイアシ類は、卵からノープリウスを経て成体に至るまで通常13の発育段階を有しているが、その中で遊泳能力が完全に欠如してしかも色素含量の低い卵のステージが最も紫外線に対して脆弱であることが明らかになった。瀬戸内海や島根県中海で採集した8種類のカイアシ類について、卵の艀化に及ぼす紫外線の影響を調査した結果、水柱に広く分布するカイアシ類の卵は紫外線の影響を強く受け、一方極表層性カイアシ類の卵はほとんどその影響を受けなかった。表層性種は紫外線吸収物質であるマイコスポリン様アミノ酸と活性酸素を沈静化する働きを持つカロチノイド色素の含量が高いため、紫外線に対する耐性が高いのではないかと推定された。カイアシ類の成体雌の生理活性速度の指標として摂餌量と産卵速度に及ぼす紫外線の影響を調査し、高い紫外線ドース下ではそれらの活性は低下することを明らかにした。また微小動物プランクトンの一群である有鐘繊毛虫類の1種(Favella taraikaensis)を異なる紫外線条件下で培養した処、本種は日間UVBドース1.1kJm-2以上では全く増殖できなかったので、動物プランクトンの中では特に原生動物が紫外線増大の影響を顕著に受けるのではないかと推定された。親潮域では紫外線の効果は平均値としては一次生産者とその捕食者に対して同等であるが、若干、
動物に対しての効果が大きいと考えられること、個々の実験結果では、紫外線の効果が一次生産者と捕食者に対して異なること、紫外線感受性の季節変化が両者で異なることなどから、植物が増えるとか動物が増えるといった方向性は一定ではないが、明らかに海洋表層の低次栄養段階の生物の構成に影響を及ぼしていたことを明らかにした。さらに、微小動物プランクトン中、最も卓越する無殻繊毛虫が、紫外線による影響が最も顕著であることを現場で確かめた。
 以上の結果から、植物プランクトン同様に動物プランクトンも紫外線の影響を顕著に受け、場合によっては動物プランクトンの方が植物プランクトンよりも脆弱であることも示され、今後の紫外線の増大は海洋の低次生産段階において変化を引き起こす可能性が示唆された。


[キーワード]

紫外線、プランクトン、食物網、生残率、摂餌率