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[研究代表者] | |
資源環境技術総合研究所 |
●冨永 衛 |
[通商産業省 工業技術院 資源環境技術総合研究所] | |
水圏環境保全部 水質計測研究室 |
●冨永 衛・田尾博明・今川 隆・山下信義 |
(委託先) 東京水産大学 |
●大槻 晃・橋本伸哉 |
23,954千円
(平成9年度予算額 6,066千円)
東シナ海や日本海を中心に、PCB及びダイオキシン等の有機塩素化合物、並びにトリブチルスズ等の有機スズ化合物の汚染実態や汚染メカニズム、特に海水から懸濁態として底質に蓄積される過程の解明に関する研究を行った。まず、分析法として、ガスクロマトグラフと誘導結合プラズマ質量装置(GC/ICP−MS)を結合したシステムを開発することにより、従来よりも100倍以上高感度な分析を可能にした。また、ポンプやフィルター、吸着樹脂等を一体化して海水中でろ過することにより、非汚染で有機塩素化合物を溶存態と懸濁態に分別して濃縮することができる現場ろ過システムを開発した。次にこれらのシステムを用いて、日本海におけるPCBの深度分布と異性体パターンを初めて明らかにした。また、これらのパターンから日本海の複雑な成層の存在を明らかにし、日本海固有水が過去のPCBs汚染を記録している可能性を指摘した。更に人工化学物質の環境挙動を理解するためには、表層海水や底質の分析に加えて、鉛直分布も含めた三次元的なモニタリングが゛重要なことを明らかにした。一方、有機スズ化合物も疎水性の大きいトリブチルスズ(TBT)は、ジブチルスズ(DBT)やモノブチルスズ(MBT)に比べてより強く懸濁態に吸着され、海水から底質に除去・蓄積されることが分かった。船底塗料のTBTは小型船舶では禁止されているが大型船舶では禁止されていなため、大型船舶からの汚染が懸念される東京湾、マラッカ海峡で調査した結果、巻き貝にインポセックスを起こさせるに十分な濃度のTBTが検出された。また、TBT/DBT比から、マラッカ海峡では船底塗料のTBTが主な起源であり、東京湾ではそれ以外に排水処理施設からのDBTも起源になっていると推測された。有機スズ化合物に関しては、TBT以外にも自然条件下で生成するメチルスズ化合物がかなりの濃度(pptレベル)で存在する場合があり、リスク評価で考慮する必要があることが分かった。
広域海洋汚染、有機スズ化合物、有機ハロゲン化合物、マッセル