研究成果報告書 J96B0542.HTM

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[B−5 気候モデルによる気候変動評価に関する研究]

(4)気候変動に係わるフィードバックプロセスの詳細なモデル化に関する研究

��大気水循環と雲過程におけるフィードバック機構の評価


[研究代表者]

国立環境研究所  ●高薮 縁

[環境庁 国立環境研究所]

大気圏環境部 大気物理研究室

●高薮 縁、沼口 敦

(委託先)東京大学気候システム研究センター

●中島映至


[平成6年度〜平成8年度合計予算額]

12,937千円

(平成8年度予算額 4,300千円)


[要旨]

 雲が気候に及ぼすフィードバック機構を明らかにするため、衛星データおよび放射モデルを用いた雲の特性とその効果の解析を行った。また、気候モデルにおける雲の取扱の改良を行った。主な成果は以下の通りである。
(1)大気大循環モデルにおける有限雲の存在の効果を大気放射過程に取り込むためのセミ・ランダム法を開発し、放射コードに組み込むことに成功した。その結果、従来のランダム法に比較して時間計算が大幅に縮小できることが判明した。
(2)TOGA COARE(熱帯海洋と全球大気プログラム/海洋−大気結合応答実験)観測のデータを用いた総合的な解析により、熱帯海洋上の準2日周期雲システムに焦点をあて、数千kmスケールの大気擾乱に伴う雲群の構造を調べた。その結果、気候モデルの分解能に匹敵する大規模なスケールに組織化された力学的大気擾乱と積雲対流雲・アンビル雲(かなとこ雲)との関係が明らかになった。
(3)ERBE(地球放射収支実験)、ISCCP(国際衛星雲気候計画)の衛星データを用いて雲の放射強制力(雲の存在による大気上端での下向き放射フラックスの増加分)の解析を行った。その結果、雲の放射効果は地理特性と強い関わりを持っていることが解明した。中でも特徴的なのは、地表面の気温・反射効果の高い砂漠では雲が保温効果に働くこと、また、高度が大きい巻雲域の放射強制力は中立に近いことであった。特に熱帯域の巻雲の放射効果に関しては、積雲対流の組織化などの力学的な効果との相互作用によるバランス機構を考慮する必要が示唆された。
(4)ISCCPによる雲の光学的特性のデータを精密な放射モデルにとりこみ、雲型別の雲の放射効果を推定する方法を開発し、実際のデータによる計算を行った。この方法による解析は、雲の放射効果と積雲対流の大規模組織化の力学的作用との相互作用について気候モデルを評価する際に有効である。
(5)赤外チャンネルを用い、上層雲の雲微物理特性(有効粒径および光学的厚さ)の推定量を求めるアルゴリズムについて研究した。上層雲が存在した場合に人工衛星が受ける放射輝度について、精密な放射伝達モデルによる数値シミュレーションを行い、赤外窓領域2波長での輝度温度を利用した従来のSplit Window法を改良したNSW法(規格化したSplit Window法)を開発した。この方法は様々な雲頂高度・地表面温度に対しても適用可能であり、また、近赤外波長も併用することで、より精度の高い解析が可能となった。さらにこの解析アルゴリズムを実際のNOAA衛星のAVHRR(高性能高分解能放射計)観測による赤外3チャンネルデータに適用し、上層雲を構成する氷粒子の有効粒径および光学的厚さの全球解析を行った。その結果得られた知見は、地球の温暖化に対して、熱帯の上層雲が中−高緯度のものよりも大きな役割を果たしていることを示唆している。


[キーワード]

雲の放射強制力、雲の光学的特性、衛星データ、高精度放射伝達モデル、積雲対流の組織化、セミ・ランダム法