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[研究代表者] |
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気象研究所 ●柴田清孝 |
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[気象庁 気象研究所] |
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気候研究部 |
●柴田清孝 |
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●千葉 長(平成6−7年) |
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●山崎孝治(平成6年4月一9月) |
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●黒田友二(平成8年) |
(委託先) |
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北海道大学理学部 |
●山崎孝治(平成7−8年) |
18,511千円
(平成8年度予算額 5,798千円)
大気大循環モデルにトレーサーを組み入れ、モデル内の風による、低緯度における対流圏から成層圏(中層大気)へのトレーサーの流入状態を調べた。
最初に、大気大循環モデルの分解能を決めるために、モデルの水平・鉛直分解能が中層大気循環に及ぼす影響評価を行った。鉛直分解能を2.8kmからその1/4の700mに増加させると、低緯度での成層圏の風に顕著な変化が現れ、弱い東風が西風に代わった。この原因と思われる赤道波を解析してみると、鉛直分解能の増加によって波数1と2、鉛直波長5−10kmのケルビン波のエネルギー密度(以下「パワー」という)が大きくなっており、これが西風発現の原因であることが解った。次に水平分解能を経度7.5度×緯度5.3度からその1/4の経度4.5度×緯度2.9度に増加させると西風領域の上端が低くなり(下端はあまり変化しない)、西風領域が狭くなりかつ少し強くなった。さらに南北分解能を1/2にすると、西風の強化、その領域の顕著な下降が見られ、現実大気中で見られる準二年振動の西風位相の下降に似た現象が見られた。赤道波の解析から波数4、鉛直波長5kmの混合ロスビー重力波のパワーが南北分解能の増加とともに大きくなっており、この波の表現の向上が西風領域の下降の原因の1つであることが解った。
次に、モデルにより積分期間2ヶ月のトレーサーの流入実験を行った。10,000個のトレーサーを赤道対流圏上層、中層、下層部にそれぞれほぼ一様に配置して、初期位置による成層圏への流入のしやすさを調べた。その結果、2ヶ月の期間では対流圏上層が初期位置として最も適切であることがわかった。成層圏への流入は赤道より少し離れた(10−15度)緯度帯で起こり、帯状平均の非断熱加熱率の最大値の緯度25度付近より低緯度に位置している。水平分布ではある経度帯で流入していて、その領域は風が非常に弱いか、弱く回っていて、かつ非断熟加熱率が大きいという2つの条件が満たされている、言い換えると、長期間上昇を続けられる領域であった。この輸送実験を毎月の初日の風を初期値として2年半程行い、そのトレーサーの成層圏への流入数、流入領域の季節、長期変動を調べ、力学的な手法による対流圏から成層圏への質量輸送までの評価に概ね一致することが分かった。
中層大気、季節変動、物質循環、数値シミュレーション