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[研究代表者] |
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国立環境研究所地球豪境研究グループ野生生物保全研究チーム ●高村健二 |
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[環境庁 国立環境研究所] |
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地球環境研究グループ |
野生生物保全研究チーム |
●高村健二 |
(委託先) |
京都大学 |
●武田博清 |
マレーシア森林研究所 |
●Laurence G.Kirton |
30,531千円
(平成7年度予算額 9,689千円)
マレーシア半島部の低地熱帯雨林で樹木生育養分の供給元として重要な木材および落葉の分解過程について調査した。本研究では複数年にわたる落下植物遺体の基礎的な調査によって植物遺体供給量の季節的な変動特性を明らかにすると共に熱帯林養分循環経路の一つの環、林床での分解経路への物質流入量を把握した。同時に分解速度を測定することによってこの経路を通じての物質流出量も把握しておりこれらの流量は面積当たりにして温帯林のほぼ2倍に達することが明らかとなった。つまり植物体が大量に生産されてそれが速やかに分解されていくというのが熱帯林の物質循環系の特徴である。
分解に関わる土壌動物はシロアリが豊富であった。一方熱帯林では少ないトビムシでも分解微生物の盛んな活動を反映して微生物食の種が比較的多いことが明らかとなった。シロアリについては木材の分解においてキノコシロアリ亜科のシロアリが優占していた。落葉の分解についてもこの分類群のシロアリが重要な働きをしていることは従来の報告が指摘しており、熱帯林の分解に関わる動物としてこれらのシロアリが特に注目されてしかるべきであると考えられる。
植物遺体分解に対する土壌動物の貢献度はその促進の程度が最大で約8倍にも達することが証明された。植物遺体の分解過程においては炭素1窒素比が一定の檀に下がった時点まで窒素の放出が抑制される不動化現象が広く観察されるが、温帯林に比べて熱帯林ではこの比が比較的高い時点で窒素の放出が始まることも明らかとなった。この現象はやはり土壌動物の働きによると説明された。この点でも動物による分解の促進がはっきりしたわけである。すなわち、これらの動物なしに熱帯林内の分解の進行、ひいては土壌形成が成り立たないことが推測される。
植物遺体、土壌動物、養分、シロアリ、分解