研究成果報告書 J95E0220.HTM

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[E−2 熱帯林生態系における野生生物種の多様性に関する研究]

(2)主要樹種の環境適応機構の多様性に関する研究


[研究代表者]

森林総合研究所 森林環境部 環境生理研究室  ●松本陽介

[農林水産省 林野庁 森林総合研究所]

森林環境部 環境生理研究室  ●松本陽介・石田 厚・重永英年・上村 章

北海道支所 樹木生理研究室  ●丸山 温

元森林環境部 群落生態研究室(現JICA、インドネシア駐在) ●藤間 剛

(委託先)

早稲田大学 人間科学部

●森川 靖

農林水産省 国際農林業研究センター 林業部

●大角泰夫

マレーシア連邦国 マレーシア森林研究所(Forest Research Institute Malaysia, FRIM)

環境科学部(Environmental Sciences Division)

●Son Kheong Yap, Ang Lai Hoe


[平成5〜7年度合計予算額]

28,455千円

(平成7年度予算額 7,450千円)


[要旨]

 フタバガキ科樹種は、熱帯林生態系を特徴づけるエマージェント層を構成する樹種群であり、かつ熱帯における主要木材生産樹種群である。その成長や生態生理特性を明らかにするために、主にフタバガキ科樹種を対象に、P−V法を用いた水分特性、および携帯式光合成・蒸散測定装置等を用いた個葉の光合成特性や水蒸気拡散コンダクタンス特性などを測定し、その特性の評価を行い、環境適応機構の多様性を以下のように明らかにした。
 フタバガキ科樹種の苗木における水分維持能力は低いが、若齢木や成木では、葉の形態的な乾燥適応のみならず、浸透圧調節による水分維持能力を高めていること。また、水ストレスや温度や光環境に対する適応機構は、樹種間差が認められ、Shorea platycladosおよびHopea odorataは、高温、および水ストレスに対する適応性がフタバガキ科樹種のなかでは比較的高いこと。いっぽう、S.assamicaでは、光要求度が強く光合成の最適温度が比較的低く高温域での低下が大きく、かつ水ストレスに弱いこと。早生樹であるAcasia mangiumの光合成速度は、熱帯樹種のなかでは比較的高いが、温帯の代表的な早生樹であるカバノキ類とほぼ同等であること。また、フタバガキ科樹種の光合成速度は、温帯の常緑広葉樹類とほぼ同じ範囲にあり、Dipterocarpus oblongif oliusleprosulaは比較的高いが、D.cornutusS.ovalisなどは低いこと。フタバガキ科樹種のうちでも比較的成長の早いS.leprosulaと早生樹であるA.mangiumの水蒸気拡散コンダクタンスなどの比較から、前者は吸水抵抗が大きいため気孔閉鎖を起こしやすく、その結果十分なCO2供給が妨げられ光合成の日中低下が起こりやすいこと。高温多湿な熱帯多雨林を構成する樹種においても、S.assamicaのように大きな光合成の日中低下を示すものが少なからずあること。高木の陽樹冠を構成している葉は、様々な葉齢構成を持っており、その葉齢によっても、また、同様な葉齢であっても、光合成速度が異なること。などが明らかになった。


[キーワード]

熱帯樹木、水分特性、光合成特性、半島マレーシア