研究成果報告書 J95E0110.HTM

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[E−1 熱帯林生態系の環境及び構造解析に関する研究]

(1)熱帯林構成種の群集動態に関する研究


[研究代表者]

森林総合研究所 九州支所 暖帯林研究室

●新山 馨

[農林水産省 林野庁 森林総合研究所]

九州支所 暖帯林研究室

●新山 馨

生産技術部 更新機構研究室

●飯田滋生

国立環境研究所

地球環境研究グループ

●木村勝彦

(委託先)

大阪市立大学 理学部 生物学科

●神崎 護


[平成5〜7年度合計予算額]

18,717千円

(平成7年度合計予算額 5,312千円)


[要旨]

 熱帯林の種多様性とその維持機構を明らかにするためには、長期の観察に耐えられる大型の試験地を設定し、種子生産、種子散布、実生の定着、幼木の成長から個体の成熟までの人口動態学的なデータをとる必要がある。このような個体群の構造と動態を基にした生活史特性の比較なしに、熱帯林の群集構造の形成原理の様な生態学上の重要なテーマに迫ることはできない。我々は、マレー半島のフタバガキ林を構成する主要樹種の個体群構造とその動態を明らかにすることを目的として、クアラルンプール近郊のセマンコック保護林内の丘陵フタバガキ林に6haの長期観察用の試験地を設定し、1992年以来、継続調査を行なってきた。セマンコック保護林は、狭い尾根に発達した典型的な丘陵フタバガキ林で、セラヤ(Shorea curtisii)が優占し、林床にはパーム(Eugeissonia tristis)が多い。ここで、dbh(胸高直径)>5cm以上のすべての樹木の位置と胸高周囲長を測定した。また10mごとに設置した1mx4mの方形区で稚樹のセンサスを、100個の種子トラップおよび1mx1mの方形区で種子と実生の生存率を調べた。またギャップの調査と更新に大きな影響を持つと考えられパーム(Eugeissonia tristis)の分布調査を6haの全域で行なった。樹高5mと10mの2つにギャップを分類し、5x5m方形区ごとにギャップか否かを記載した。パームは各方形区ごとに個体数を記載した。緩斜面にある大型のバンブーの分布も合わせてチェックした。
 この試験地には約500種が出現するが、個体数の多い上位の30種を主要樹種として個体群構造を解析した。最大胸高画径と稚樹の豊富さ、サイズ分布のskewnessの間にはこれら30種で相関がなかった。サイズ構造の類似度によるクラスター分析では、Emergent,Canopy,Understory,othersの4つの種群が認められた。しかし4グループのサイズ分布の違いはかなり連続的であった。空間分布の相関によるクラスター分析では、大きくは尾根を中心に分布する種群と斜面を中心に分布する種群の2つに分かれた。有意な負の分布相関を持つ種の組み合わせは、種の組み合わせ全体の約20%であった。すなわち空間の住み分けによる種の共存は種間関係の約20%でのみ当てはまるということである。


[キーワード]

丘陵フタバガキ林、個体群の構造、空間分布、サイズ構造、パーム、ギャップ、共存、半島マレーシア