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[研究代表者] |
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森林総合研究所 森林環境部 森林災害研究室 |
●岡野通明 |
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[農林水産省 林野庁 森林総合研究所] |
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森林環境部 |
森林災害研究室 |
●岡野通明・吉武 孝 |
気象研究室 |
●大谷義一 |
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森林災害研究室 |
●中村幸一(千葉大学) |
30,668千円
(平成7年度予算額11,915千円)
成層圏オゾン量減少が顕在化しており、それによって引き起こされる紫外線量増加による生物影響が懸念されている。森林生態系では樹木等が永年的かつ長期間にわたり強紫外線に曝されるために、特に影響が大きいと予想される。
本研究では森林の更新・更生機構の観点に立ち、次世代の森林を担う稚樹・幼樹等の下層植生の反応に着目して、B領域紫外線(以下UV−B)量増加による森林植生への影響の評価に関する研究を行った。
紫外線の植物影響調査のため、短期および長期に渡る紫外線照射実験を実施した。本年度は、主にアカエゾマツとブナの稚苗を短期UV−B照射試験に供試した。発芽直後のアカエゾマツとブナ実生稚苗に対しては短期間の照射にもかかわらず、顕著な影響を及ぼすことが明らかとなった。強度のUV−B照射により葉の障害が著しく、形態変化や苗の枯死を伴う障害を受けた。
連続照射開始から2年目を迎えた長期照射試験では、主に可視的な影響発現の観察や生長量の測定を行った。昨年度の実験では、UV−B照射による落葉期のブナ幼苗の葉色変化の促進が観察されたが、本年度は処理による差異は認められなかった。またこれらの幼苗に対しては可視的な障害を与えることは少なかった。
トドマツ、アカエゾマツ、ブナの各幼苗ともに紫外線の照射により生長阻害の影響を受け、特に伸張生長が抑えられる傾向が見られた。本実験により、紫外線照射が樹木の稚苗や幼苗に形態の変化や生長量の抑制などの影響を及ぼす可能性のあることが明らかになった。
また高山帯における紫外線強度の予測に関する研究では、1993年度より行っている山岳地の全天放射スペクトルの観測と、低地での全天放射スペクトルを比較することにより、高山帯における紫外線の潜在的な強度について見積りを行った。高山帯の紫外線量は実測と推定により、標高の低い地点より紫外線強度が潜在的に相当大きいことが示された。
UV−B、森林植生、群落内光環境、放射伝達モデル、植物影響