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[研究代表者] |
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環境庁 自然保護局野生生物課 |
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(委託先) |
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(財)自然環境研究センター |
●佐藤大七郎、米田政明、石井信夫、市河三英、鋤柄尚子、澤志泰正 |
愛媛大学 理学部 |
●大森浩二、加藤和明 |
九州大学 理学部 |
●鹿島 薫 |
九州大学 比較社会文化研究科 |
●小池裕子 |
41,652千円(平成6年度予算額 14,030千円)
マレー半島北西部にあるマタンマングローブ地域を調査地として、1992−94年度に、マングローブ林の状況ごとに哺乳類、鳥類、魚類、ベントス、ならびに珪藻などの湿地依存種の調査を行い、湿地の状態を明らかにするため、地史学的調査や物理化学的測定、貝殼成長線の分析を行った。また、西表島のマングローブ林においてベントスと物理化学的環境の分析を行い、マタン地域との比較を行った。マタン地域の湿地依存種の調査では、マングローブ特有のベントスをはじめ、29種の哺乳類、161種の鳥類、89種の魚類などを確認したが、伐採地周辺ではそれらの生息種数や密度は減少傾向にあった。地史学的調査により、マタン地域のマングローブ林は、近年では南北地区で増加、中部地区で減少傾同であること、また地域全体では10年間で0.5%ほど面積が縮小していることが明らかになった。伐採地と残存林における物理化学的測定の結果、マングローブ林内と河川のアンモニア態−Nと亜硝酸・硝酸態−Nの交換があり、伐採地からの栄養分の流出は残存林より多いことが認められた。安定同位体比から林内の動物は森林生態系に、前浜干潟の動物は内水面生態系に依存していること、魚類の中には他の地域から回遊してくるものも生息することが明らかになった。貝殼成長線の測定からフクレハイガイの約50%が当歳貝、残りが1年貝であること、雨季の1〜3月に障害輪が認められ、気象状況が貝殼成長に影響を及ぼしていることが示唆された。出現種数から見ると西表島のベントスはマタン地域とほぼ同じであったが、両地域間の共通種はほとんどないことが明らかになった。また、物理化学的分析から、定期的に伐採の行われているマタン地域と比較して、西表島のマングローブ林がより天然の状態であることが示唆された。マングローブ林伐採が湿地依存種の生息環境に様々な影響をもたらしているという調査結果をもとに、伐採地の配分方法や保護地域指定など湿地保全対策の検討を行った。
マレーシア、マングローブ、湿地依存種、珪藻、安定同位体