研究成果報告書 J94D0220.HTM

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[D−2.海洋汚染物質の海洋生態系への取り込み、生物濃縮と物質循環に関する研究]

(2)海洋プランクトンの海洋汚染物質の取り込み及び循環に関する研究


[研究代表者]

   

国立環境研究所

 

●高松武次郎

[環境庁 国立環境研究所]

水土壌圏環境部 部長

●渡辺正孝

地球環境研究グループ

海洋研究チーム

●原島 省・功刀正行


[平成5〜6年度合計予算額]

21,618千円(平成6年度予算額 11,796千円)


[要旨]

 海洋の食物連鎖で重要な位置を占める動物プランクトンは、海洋での汚染物質の循環に重要な役割を果たすとともに、局所的海域の汚染状況もよく反映する。1986〜1994年の夏に日本近海で採取した動物プランクトン、稚魚、及び浮遊魚卵の元素組成(最大37元素)を中性子放射化、ICP−AES及び原子吸光で分析した。その結果の解析から以下の点が明らかになった。(1)動物プランクトンの消化管内にはAl,Sc,Ti,Feなどに富んだ無機物が取り込まれている。(2)その混入量は、硝酸だけで分解した試料と硝酸とフッ化水素酸で分解した試料(いずれも蒸気分解)の分析値の差から概ね評価できる。(3)Pなどの多量必須元素の濃度は、動物プランクトンの個体の大小に関係なくほぼ一定であったが、重金属などの濃度は個体重量が小さくなるほど増加した。(4)多元素の分析結果を用いたMKT−プロットの切片と勾配の比較から、動物プランクトンの汚染状況や重金属蓄積性の評価が可能となった(この方法により、内湾の動物プランクトンは外洋のものより汚染されていることが示された)。(5)MKT−プロットを食物連鎖において動物プランクトンの直上位に位置すると考えられる数種類の魚(稚魚)に適用した結果、プロットの勾配はプランクトンでの値より一般的に大きく、重金属の蓄積が見られた。これは、プランクトン中の重金属が、多分食物連鎖を通してその捕食者である稚魚に移行・濃縮した結果と推測される。また、MKT−プロットの勾配は魚類の卵では一層大きく、魚類に蓄積された重金属が卵に移行し易いことも示唆された。


[キーワード]

海洋、動物プランクトン、食物連鎖、汚染物質、元素分析


[リンク]J94D0220.pdf