検索画面に戻る Go Research



(356Kb)

[E−1.熱帯林生態系の環境及び構造解析に関する研究]


[研究代表者]

 

国立環境研究所

●古川昭雄

[環境庁 国立環境研究所]

 

生物圏環境部 上席研究官

●古川昭雄

地球環境研究グループ 森林減少・砂漠化研究チーム

●可知直毅、宮崎忠国、奥田敏統

               野生生物保全研究チーム

●椿 宜高、高村健二、永田尚志

科学技術庁特別研究員

●木村勝彦、富山清升

[農林水産省 林野庁 森林総合研究所]

森林環境部 種生態研究室

●新山 馨

生産技術部 更新機構研究室

●飯田滋生

[北海道支所 保護部]

●福山研二、前藤 薫

[農林水産省 熱帯農業研究センター]

研究第一部

●池田俊弥、松村 雄、小西和彦

(委託先)
北海道大学


●佐藤利幸

自然環境研究センター

●佐藤大七郎、石井信夫


[平成2〜4年度合計予算額]

163,070千円


[要旨]

 本研究では、熱帯林の構造を解析するために、(1)マレーシアの丘陵フタバガキ林の構造、(2)カイロモンなどを利用した熱帯林の昆虫群集調査、(3)シダ植物の分布に関する研究を行なった。
(1)マレーシアの丘陵フタバガキ林の構造
 マレーシアのセマンコック森林保護区内の丘陵フタバガキ林に6ヘクタールの永久調査区を設定して各種調査を実施した。調査区内の胸高直径5cm以上の全木本個体について直径、位置の計測、種の同定を行った。また、6ha内に均等に配置した1×1m及び1×4mの重ね枠の中で全ての木本実生、樹高20㎝以上の稚樹について種同定、樹高測定を行った。さらに中央の2haの部分に面積0.5cmのリタートラップを設置し、毎月1回内容物を回収した。回収したリターサンプルは、各器官に分けて乾燥重量を測定し、花、果実については種毎に分けて個数、重量を、葉については約30種について種毎に重量を測定した。
 調査区内に出現した直計5cm以上の個体数は1930、種数は約300種であった。胸高断面積合計は48.3m2/haに達した。優占種は個体数で8%、胸高断面積合計で40%を占めたフタパガキ科のShorea curtisiiであった。
 直径分布を見ると、主要な構成種は小径木ほど多いL字型の分布を示すものが多く、調査地域の森林では優占種の後継樹が育っていて、比較的安定した森林であることが示唆された。
 4月から6月に落葉量が多いが、パターンは種によって異なった。また、同一種でも全く異なるパターンを示す場合がしばしばあった。
(2)カイロモンなどを利用した熱帯林の昆虫群集調査
 Pasoh保護林内のコアから林縁にかけて4地点、マレーシア森林研究所実験林およびSemangok保護林に、ベンジル・アセテートをつけた白色水盤トラップとエタノールをつけた黒色水盤トラップを設置して、昆虫の誘引捕獲を行った。両トラップは対にして、林床から高さ約1.5mに吊した。また、同じ調査林には黒色マレーズ・トラップも設置した。
 コガネムシ科やハナノミ科など訪花性の甲虫がベンジル=アセテート白色トラップに、キクイムシ科やゾウムシ科など樹木穿孔性の甲虫がエタノール黒色トラップによく誘殺された。エタノール黒色トラップで誘殺された甲虫類の科多様度が、森林環境の違いを最も良く反映した。Pasoh保護林内では、エタノール・トラップによるXylosandrus crassiusculusの誘殺数が、コアから林縁にかけて著しく増加した。一方、黒色マレーズ・トラップには、アリ科、ヒメバチ上科、クロバチ上科などのハチ目昆虫が大量に捕獲された。
(3)シダ植物の分布
 パソー保護林におけるAsplenium nidusの着生率を調べた。A. nidusの着生が見られる林分についてベルト方形区(2×30m)内の胸高直径、推定樹高、林床植物種数分布を求めた。また、自然林に近接したオイルパーム林の樹幹に着生したシダの個体群構造を解析した。
 葉痕と葉痕のすきまにシダは根をおろしているので、シダの着生頻度を求めるため、葉痕数を求めた。これにより、各種シダの着生している”すきま”の数を葉痕数で割って相対出現頻度を求めた。被度の解析は、オイルパームの樹幹を東西南北から高さごとに撮影し、方形区での各種の発見頻度で測定した。オイルパームの地上1mに着生したシマタニワタリの6個体を採集し、群葉構造の解析と根茎に棲む昆虫の種組成と個体数を測定した。
 着生シダが見られるのは胸高直径12cm以上、樹高8m以上の樹木であった。A.nidusの着生は直径12〜75㎝、樹高8〜40m、着生高8〜25mで確認された。パソー森林内では6個のベルトで、316本の樹木が確認され、A.nidusを着生させた樹木は2.8%であった。
 一方、オイルパーム植栽地では、樹幹全体での出現頻度の平均は45.2±13.4%であった。相対出現頻度の樹高依存性はなかったが、被度は樹高に応じて増加する傾向がみられた。また、種数は樹高に伴って増加する傾向があった。
 樹高6〜8mのオイルパームに着生したA.nidus6個体の根茎に棲む昆虫相の分布を調査した縞果、いずれの根茎にも、ゴキブリ類・ハサミムシ類がみられた。ムカデ類・アリ類・クモ類など計約20種、各根茎にはダニ類・トビムシ類を含め10種ほど生存していた。


[キーワード]

 熱帯林、永久調査区、着生植物、昆虫、カイロモン