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[研究代表者] |
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気象研究所 |
●牧野行雄 |
[気象庁 気象研究所] |
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物理気象研究部 第三研究室 |
●牧野行雄、忠鉢 繁、佐々木 徹、堤 之智 |
第四研究室 |
●青木忠生、深堀正志、青木輝夫 |
気象衛星観測システム研究部 第三研究室 |
●内野 修、永井智広、藤本敏文 |
121,405千円
近年の人間活動によって放出されたハロカーボン類の成層圏オゾンへの影響を正しく評価する数理モデルを構築するためには、その基礎となる各種のデータが必要である。とりわけ塩素酸化物(ClOx)のリザボア成分である塩化水素(HCl)は太陽光の赤外分光法により検出が可能でありその挙動の解明は重要である。本研究は、航空機上からの赤外遠隔測定法により成層圏微量化合物の日本上空における緯度分布を明らかにすること、ハロカーボン類の赤外吸収係数の実験室での精密測定を主な目的とした。
太陽光の赤外分光より成層圏HCl全量を求めるために、航空機搭載型で高分解能のフーリエ変換型赤外分光装置(最高分解能0.02cm-1)を整備し、地上及び航空機実験ののち航空機からの太陽光スペクトルの取得ができた。平成3年の航空機実験では高分解能の測定は困難であったが、太陽追尾装置の改良、機械的振動の除去などに取り組んだ。平成4年2月及び12月に行った航空機実験において、波数域2,800−3,000cm-1(波長3.3〜3.6μm)の太陽光スペクトルからHClの吸収線が捉えられた。
平成4年12月の実験では、北海道から沖縄の上空約5kmより太陽光スペクトルを取得し、得られたスペクトルについて等価吸収幅を求めた。この結果、日本上空の低緯度から高緯度へゆくほどHCl鉛直カラム全量が増加していることがわかった。この測定と同時期の札幌、つくば、鹿児島、那覇のオゾン全量観測値は平年値を示しており、この測定は日本上空成層圏に化学的異常のない状態での値を示すものと考えられる。
一方、フロン11、12の10μm付近の強い吸収帯は温暖化ポテンシャルの評価等に重要であるが、これまでに報告された値には、まだ10%以上の不確実さが残っている。このため温度依存性を解明する目的で低温セルを製作し実験を行った。従来の値に比べ良い精度(約2%)の値が得られた。温暖化指数(GWP)の値を改善するものと期待される。
オゾン層、塩化水素、赤外分光装置(FTIR)、航空機観測