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[S-3 脱温暖化社会に向けた中長期的政策オプションの多面的かつ総合的な評価・予測・立案手法の確立に関する総合研究プロジェクト]
4.温暖化対策のための、技術、ライフスタイル、社会システムの統合的対策の研究
    -IT社会のエコデザイン-(ITの産業構造に与える影響に関する研究)
[PDF](782KB)
(Abstract of the Final Report)
[PDF](362KB)
(1)環境調和型IT社会の設計(H16-18年度)
    2050年サービス・ビジネスの概要に関する研究(H19-20年度)
[PDF](1,113KB)
東京大学
    先端科学技術研究センター
藤本 淳
[平成16~20年度合計予算額] 37,967千円(うち、平成20年度予算額 5,795千円)
  情報通信技術(Information Technology: IT)の社会普及に環境配慮設計(エコデザイン)の視点を入れることで、安全で豊かな低炭素社会を実現することを目的に研究を進めている。最初に2020年における、IT普及がCO
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排出に与える影響を考察した。2020年には、高度IT技術の普及が進み、環境対策、観光、流通管理、ショッピングなど様々な場面で活用されている可能性が高い。現在の延長でこのようにIT普及が進んだ場合でも、国内総排出量の約5%のCO
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排出削減ポテンシャルをもつ。「ITによって新たな社会システムが創造される」といったダイナミックな変革が生じれば、さらに大きな削減効果が得られるであろう。そこで、2050年低炭素社会を想定して、未来社会で実現して欲しい事象を、市民1,000名へのアンケート、作家・映画監督・科学者など有識者インタビュー、および未来社会を題材としたSF(Science Fiction)映画やアニメーションの調査により、抽出した。これらキーワードをもとに、IT普及が、コミュニティや家族とのつながり、人間と自然との関係を回復させた結果、人々が目標達成に向けて、いきいきと生活している社会を、物語とイラストで描いた。このように描いた2050年社会のCO2削減量を試算した。
[キーワード] 情報通信技術(IT)、低カーボン社会、2050年社会像、エコデザイン、産業
(2)ITを媒介とした技術とライフスタイルの統合的対策の概念整理と実証的効果検証に関する研究
  (H16-18年度)
[PDF](435KB)
日本電気株式会社 基礎・環境研究所
宮本 重幸・五藤智久
長谷川聖洋・松本光崇
[平成16~18年度合計予算額] 10,541千円
  生活者が関わる家庭部門を対象として、人の環境意識と行動変革を支援する環境調和型ITシステムである「エコ・ライフスタイル・ナビゲーション(以下「エコ・ナビ」と略称)」のCO
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削減効果の可能性評価と、その実効性を確保するための課題抽出を目的とし、情報提供と環境配慮意識・行動変化との関連性に関する調査研究およびCO
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家計簿運動を利用した情報の影響に関する模擬実証実験を実施した。調査研究では、消費者行動理論をもとに環境配慮行動を規定する要因や環境配慮行動を促進するためのモデルについて整理するとともに、実際の取組についても事例収集を行った。環境に対する意識の高まりが見られる中、誤った理解をしている可能性が指摘されている。このことは、意識の高まりが環境負荷削減に繋がらない可能性をも指摘しているものであり、意識を高める取組だけでなく正しい理解を進める取組も必要であることを示唆している。また、意識の高まりがそのまま行動へと繋がっていないという課題に対し、実行意図を形成させる必要性も指摘されている。日常生活の中での環境配慮の取組について「できることがあれば取り組む」と考えている人が大多数を占めていることから、具体的な行動を実践させるための仕組みづくりが急務といえる。模擬実証試験では、NECグループ・CO
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家計簿運動に関連させ、CO
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家計簿Webサイト上で参加者に居住形態や世帯人数別のCO
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排出量データを提供し、さらに、省エネ行動をアドバイスする情報を発信した。そして、その効果をCO
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排出量の入力値とアンケート調査を利用して評価した。解析の結果、「省エネ行動の効果についての知識」が高いほど、「電気・ガス排出量の削減量」が多いことが明らかになった。また、この結果から、日本全体の省エネ効果知識が最高水準まで向上すると仮定した場合、世帯あたり18%、2,300万t-CO
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の電気・ガスCO
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削減ポテンシャルがあることが分かった。
[キーワード] エコ・ライフスタイル・ナビゲーション、CO
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家計簿、省エネ行動支援、アンケート、多変量解析
(3) 低カーボン社会を実現する移動のエコデザインに関する研究(H16-18年度)
[PDF](533KB)
富士通株式会社
    環境本部 環境技術推進センター
端谷隆文・植田秀文・中澤克仁
[平成16~18年度合計予算額] 11,673千円
  人々の移動の際に生じる環境負荷、特に自家用車利用に由来するCO
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排出の削減について、2050年頃の社会を想定して低カーボン社会が実現可能な移動のエコデザインを提案し、通勤、就業、購買といった生活シーンにおける情報通信技術(以下、ITと略す)の活用方法およびその効果を検討した。ITを活用した移動のエコデザインとして、個人情報および交通状況に基づいた複数交通手段の統合ナビゲーションを行って公共交通機関の利便性を向上させる「リアルタイム・セキュリティ交通システム」、個人の属性・生活スタイルに応じてテレワークなどの勤務地の制約が無い自由な就労形態を可能とする「分散・共同利用型オフィス」を提案した。提案モデルのCO
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排出削減効果を検討するため、消費者意向調査を実施して同モデルで想定した各種ITサービスによる自家用車利用低減の可能性を予測し、CO
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排出削減ポテンシャルを概算した。その結果、交通関連ITサービスにより自家用車通勤者が代替交通手段へモーダルシフトする場合、自家用車通勤者の56%がモーダルシフトの実施を表明し、自家用車通勤者1人あたりのCO
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排出量の削減率は25.1%と推定した(全国での削減ポテンシャルを概算すると521万t-CO
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/年)。また、テレワーク関連ITサービスにより事業所勤務者が希望する形態でテレワークを実施すると、テレワーク実施希望者は72%となり、事業所勤務者1人あたりのCO
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排出量の削減率は43.9%と推定した(同866万t-CO
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/年)。さらに、インターネットショッピング(以下IS)に関連したITサービスによる購買目的自家用車利用由来のCO
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排出削減量を推定した。アンケートによる実態調査から、梱包材・緩衝材の使用、および宅配便利用で発生する環境負荷は1.25kg-CO
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/回とし、また購買目的自家用車利用由来のCO
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排出量を3.33kg-CO
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/回とした。ITサービス導入前後のCO
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排出量変化は、導入前(実際の店舗への買い物:27.8回)の92.4 kg-CO
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/月から導入後(実際の店舗:14.4回、IS:13.3回(移行率48%))の64.8kg- CO
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/月となった。これらの結果からCO
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排出量の削減率は30%(同1920万t-CO
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/年)と推定した。
[キーワード] 地球温暖化、情報通信技術、ITS(高度道路交通システム)、テレワーク、インターネットショッピング
(4)ITによる産業の効率化における環境影響調査(H16-20年度)
    産業におけるIT活用による環境影響評価に関する研究(H19-20年度)
[PDF](533KB)
日本電信電話株式会社
    情報流通基盤総合研究所
西史郎・中村二朗・折口壮志
津田昌幸・原美永子
[平成16~18年度合計予算額] 15,507千円(うち、平成20年度予算額 1,900千円)
  本プロジェクトでは、第Ⅰ期3ヵ年(平成16年度~平成18年度)で、SCM(Supply Chain Management)等のITシステムの活用による製造業におけるCO
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削減量(無駄排除)の推計方法を設計し、この評価方法を製造業だけでなく流通業まで拡張し、も在庫圧縮によるCO
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排出削減の影響を検討した。またデル・モデルを代表とする製造直販化やBTO(Build To Order)による影響や、物流の情報化による影響の検討ならびにCO
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削減効果の推計方法の設計と試算を行った。結果、SCM、製造直販化やBTO、物流の情報化によって、2050年で間接効果を含めて約11,700万t-CO
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の削減ポテンシャルがあることを明らかにした。第Ⅱ期2年間では、第Ⅰ期3ヵ年で検討した研究成果を実現化するための施策パッケージ(policy package)を提言としてとりまとめた。さらにICTを活用した「サービサイジング(servicizing)」の実現可能性と環境影響を検討し、2050年IT社会における機器消費電力量を、この間の技術進歩を考慮して試算した。
[キーワード] 二酸化炭素、IT、サプライチェーンマネジメント、製造直販化、物流
(5)2050年IT社会におけるIT社会システムの環境負荷低減に関する研究(H18年度)
    産業構造に与えるITの影響に関する研究(H19-20年度)
[PDF](597KB)
独立行政法人産業技術総合研究所
    先進製造プロセス研究部門
    エコ設計生産研究グループ
松本光崇・増井慶次郎・近藤伸亮
[平成18~20年度合計予算額] 6,212千円(平成20年度予算額 1,805千円)
  本研究ではIT化の進展がわが国のCO
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排出量に及ぼす影響について複数の視点からそれぞれに応じた方法を用いて分析を行った。第一は2020年を対象にしてフォアキャスティング的に分析を実施した。既存の調査を参照するとともに本S-3-4内での検討内容を反映して分析した。その結果、IT化進展はIT機器・インフラの増加によってCO
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排出を2,000万t-CO
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増加させることが懸念される一方、ITシステムによる移動代替、脱物質化、各種効率化等の効果によって約8,000万t-CO
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の排出削減の可能性を持ち、合計で日本のCO
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排出を5%程度低減するポテンシャルを持つと推定された。第二は2050年を対象にしてバックキャスティング的に低炭素型IT社会を描き出し、そうした社会における生活者由来のCO
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排出を推計した。推計はS-3-4内およびS-3-1の協力を得て実施した。今日比で家庭部門CO
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と個人旅客輸送CO
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が約7割減、購入物の生産に要するCO
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も併せたCO
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では約4割減の可能性が示唆された。こうした試算の結果を一般者向けに記述し、S-3-4で作成した書籍の中に盛り込み成果とした。第三はIT化が今後国内および世界の経済構造に及ぼす影響として、国際分業の深化の促進ということに着目し、IT化が国際分業に及ぼす影響の調査を行うとともに、国際分業の深化促進がCO
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排出に及ぼす影響の可能性について、過去の統計データ等をもとに検討を行った。その結果、国際分業の深化そのものは世界のCO
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排出を増加させる影響が小さいか、むしろ減少させる可能性が高いという示唆を得た。以上の検討に加えて、S-3全体で作成した「低炭素社会に向けた12の方策(以下「12の方策」)」の中で、特に「見える化によるCO
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削減」の施策の作成に協力した。
[キーワード] IT、低炭素社会、CO
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影響評価、国際分業、見える化