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[キーワード]ウエストナイル熱ウィルス、インフルエンザウィルス、寄生蠕虫、普通種、北海道

[F-062 渡り鳥によるウエストナイル熱及び血液原虫の感染ルート解明とリスク評価に関する研究]

(3)絶滅危惧鳥類を用いた病原体感染リスクの評価に関する研究[PDF](903KB)

  酪農学園大学 獣医学部

浅川 満彦

<研究協力者>

 

  酪農学園大学 酪農学部

佐々木 均

  北海道大学大学院 獣医学研究科

前田秋彦・前田潤子

  琉球大学 医学部

斉藤 美加

  ウトナイ湖野生鳥獣保護センター

加藤智子・盛田 徹

  北海道環境科学研究センター

長 雄一

  [平成18~20年度合計予算額] 36,341千円(うち、平成20年度予算額 5,000千円)

[要旨]

  絶滅危惧鳥類と同じ生息域にいてこれら鳥類の感染源となりうる普通種の鳥獣類を対象としてウエストナイルウイルスWNVとほか、平成20年度初旬、オオハクチョウから検出され話題となったインフルエンザウイルスなどのウイルス・寄生虫の感染状況の一端を明らかにした。VecTest応用の可能性については、酪農学園大学野生動物医学センターWAMCに傷病個体や死体などで送付され、冷凍保存された870個体から口腔内スワブを採取し、このスワブをキット用サンプルで検討し、全て陰性結果を得た。
  日本脳炎ウイルスの活動が低いことが知られている北海道で捕獲した野生カモ血清中にJEV中和抗体検査を実施したところ、フラビウイルスに暴露された経験がある事が判明した。
  北海道産野生カモ類でフラビウイルスに暴露された経験がある事が判明したが、その感染経路などの背景は不明であったため、野鳥とほぼ同所的に生息する石狩地方のアライグマ血清30サンプルについて、上記同様の方法で抗フラビウイルス中和抗体価測定を行った結果、1個体でのみ陽性反応を得た。
  以上のようなウイルス学的な側面に加え、寄生蠕虫類の多様な検討も実施した。寄生虫症の感染プロセス解明の疫学モデルとして寄生線虫類をモデルに、北海道内で死体として得られた野鳥417個体、中でもカモ目鳥類から得られた寄生蠕虫類についてK関数法を用い空間疫学的な分析を実施した。特に本解析では緯度・経度を空間情報としてS+SpatialStatsの関数を用いた。その結果、種によって形成するクラスタが異なり、広域分散型、凝集型、ランダム分布型等寄生虫種によって異なる傾向が認められた。さらに、寄生蠕虫学的新知見も追加できた。ライチョウLagopus mutusおよびヤンバルクイナGallirallus okinawaeは共に希少鳥類であり、環境省RDBでは絶滅危惧種とされ、加えて天然記念物にも指定されている。この両種から初報告となるHeterakis属線虫について記載した。