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[キーワード]炭素固定、ロシア、凍土地帯、北方林、温暖化

[B-053 ロシア北方林における炭素蓄積量と炭素固定速度推定に関する研究]

(4)炭素蓄積量と炭素固定速度の広域評価[PDF](7,323KB)

  独立行政法人森林総合研究所 研究コーディネータ 

沢田治雄

  独立行政法人森林総合研究所 国際連携拠点 

鷹尾 元

  [平成17~19年度合計予算額] 20,848千円(うち、平成19年度予算額 6,838千円)

[要旨]

  ロシアの森林面積は、世界の森林面積の2割を占めている。しかも、中央シベリアと東シベリアには凍土地帯が広がり、広大なカラマツ林を形成している。温暖化の影響は高緯度地帯で顕著に現れると多くのシミュレーションが警告しており、限界的な環境下に生育しているロシアの森林では、その影響の大きさが懸念されている。しかし、ロシアの森林と温暖化との関係に関して、公開されている科学的な成果が乏しかった。本研究は、NOAA衛星から得られる植生指数(NDVI)と表層温度(LST)データ、地上での林分調査データを統合して、ロシア全域の森林炭素量の推定手法開発を行ったものである。主に用いた衛星データは20年分の10日間合成NOAAデータである。NOAAデータに関しては、森林総研の時系列モデルフィルタ(LMF-KF法)を作用させて、雲などの影響のほとんどない地上データセットを利用することで、森林域を同定する手法を開発し、その面積変化と環境変化を明らかにした。また、森林火災のようなイベントを効率的に発見する手法として、記号列処理手法を開発した。植生指数と表層温度データの組み合わせは生態学的にも意味のある様々な植生環境パラメータを生み出せることを示した。植生の生育因子である水分指数もそのひとつであるが、NDVIとLSTから、水分指数画像を生成する手法を開発した。また、この地域に特徴的な凍土地帯に関して、凍土深は推定できなかったものの、その分布密度を推定できることを示した。凍土地帯は土壌中炭素量が極めて多いことから、温暖化の影響に関しても特別の注意が必要な地域であり、自動判別を可能にした意義は大きい。炭素固定量に関しては、NOAAデータの10日間隔のNDVIとLSTを利用した純一次生産量(NPP)の推定を行い、1980年代からの変化の様子がロシアで面的なパターンを持ち、広域環境の影響であることを示した。