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[S-1 21世紀の炭素管理に向けたアジア陸域生態系の統合的炭素収支研究]

テーマⅢ:アジア陸域生態系の炭素収支変動予測と21世紀の炭素管理手法の検討

(1)陸域生態系吸収・放出の近未来予測モデルの開発[PDF](558KB)

    筑波大学大学院生命環境学研究科

及川武久

    国土交通省気象研究所
    環境・応用気象研究部第三研究室


馬淵和雄

    独立行政法人海洋研究開発機構
    地球環境フロンティア研究センター


伊藤昭彦

<研究協力者>

 

    独立行政法人国立環境研究所

G. A. Alexandrov

    独立行政法人海洋研究開発機構

稲冨素子・加藤知道

    筑波大学

加藤悦史

  [平成14~18年度合計予算額]  61,985千円(うち、平成18年度予算額 14,505千円)

  [要旨]

  地域スケールの炭素収支を高精度で評価しまた将来予測を行うには、観測に基づくデータ解析だけでなく、数値モデルを用いた詳細なシミュレーション解析が有効である。本課題では、3種類の異なるアプローチによる陸上生態系モデルを開発し、東アジア陸域生態系の炭素収支を再現し、モデル間の相互比較やフラックス測定などの観測データとの比較を行った。ここで扱ったのは気象学的陸面過程モデルBAIM、生物地球化学的モデルSim-CYCLE、数理生態学的モデルTsuBiMoである。Sim-CYCLEは岐阜高山などのS1テーマIサイトにおいて、フラックス観測との比較による検証を行い、正味CO2交換の季節変化などが妥当に再現できることを確認した。BAIMは気象モデルとリンクして使用され、アジア陸域の炭素収支を気象変動の観点から解析することが可能である。TsuBiMoは数理生態学的な手法を用いて、地点スケールの生産力データから広域の炭素収支へと拡張を行っている。いずれのモデルも光合成と生態系呼吸の差分として純生態系生産(正味CO2収支)を推定し、地域スケールのシミュレーションに適用可能である。Sim-CYCLEは空間分解能1kmで実行され、土地利用や気象条件の不均質性を考慮することができる。各モデルで2000-2005年の期間について実験を行ったところ、植生の生産力が緯度方向の温度・水分傾度に沿って高緯度方向に減少する傾向が再現された。正味CO2収支についても、多くの期間・地域についてモデル間で共通した変動傾向が見られたが、年によってはモデルごとの環境依存性の違いにより異なる応答傾向が見られることがあった(例えば2002年の正味収支)。これらの研究結果により、東アジア陸域の炭素収支を評価する生態系モデルの高度化が達成された。


  [キーワード]  陸域生態系、シミュレーション、相互比較、炭素収支、東アジア地域