検索画面へ Go Research


[S-1 21世紀の炭素管理に向けたアジア陸域生態系の統合的炭素収支研究]

テーマI:ボトムアップ(微気象・生態学的)アプローチによる陸域生態系の炭素収支解析に関する研究

(4)陸域生態系の炭素収支データベース構築と統合解析に関する研究

 1)アジアフラックスデータベースネットワークのデータ整備[PDF](550KB)

    独立行政法人農業環境技術研究所
    大気環境研究領域


宮田 明

<研究協力者>

 

    独立行政法人農業環境技術研究所

間野正美・小林義和・小野圭介

    独立行政法人国立環境研究所

藤沼康実・平田竜一

    岡山大学大学院環境学研究科

山本 晋

  [平成14~18年度合計予算額]  30,753千円(うち、平成18年度予算額 7,399千円)

  [要旨]

  生態系炭素収支のサイト間比較や統合解析を推進するためには、各サイトで取得されるデータ、なかでも渦相関法によるフラックスデータの品質が管理・統一されていることが重要である。本課題は、テーマIに参画しているタワーフラックス観測サイトのフラックス観測手法の実態を把握し、観測手法の差異がフラックス値に及ぼす影響を明らかにするとともに、データ処理の各段階のなかで特に問題となる品質管理の標準化手法と簡便な欠損データ補完法を提示することにより、プロジェクトのデータベースの構築や統合解析に貢献することを目的とした。テーマI参画サイトに対して実施した観測手法の実態調査により、渦相関計測システムについてはオープンパス型とクローズドパス型が混在している点を除けば問題は少ないが、データ処理法についてはフラックス計算法や品質管理法に違いがあることが明らかになった。既往の文献・資料の調査や、テストデータを各サイトに配布して実施した比較実験により、同一の計測システムであっても、サイト間の計算手法の違いにより、潜熱およびCO2のフラックスの1ヶ月間平均値に10~15%の差が生じる可能性があるので、サイト間でフラックスの定量的な比較を行う場合には、計算手法の違いによる影響を考慮した判断が必要なことがわかった。フラックスデータの品質管理については、渦相関原データの統計値の検査を基本として、これに定常性や乱流強度等の検査を付加することにより、適切な品質管理が行えることや、偶然誤差も定常性の検査として有効なことを示した。また、水田とカラマツ林で観測されたCO2フラックスの年間データを用いて、オープンパス型とクローズドパス型渦相関法の比較を行い、両者には系統的な差異があり、その主な要因は超音波風速温度計の温度信号を用いた密度変動補正項の過大・過小評価にあることを明らかにした。さらに、サイト間比較や統合解析への適用を目的とした簡便かつ誤差評価が可能な欠損データの補完法として多重代入法の有効性を確認し、テーマIの草原・農耕地サイトの炭素収支の比較研究に適用した。


  [キーワード]  渦相関法、標準化、品質管理、補完(補間)、サイト間比較