[S-1 21世紀の炭素管理に向けたアジア陸域生態系の統合的炭素収支研究]
テーマI:ボトムアップ(微気象・生態学的)アプローチによる陸域生態系の炭素収支解析に関する研究
(2)草原・農耕地生態系における炭素収支の定量的評価に関する研究
4)安定同位体比を用いたC3/C4混生草原における炭素動態の解析[PDF](409KB)
筑波大学大学院生命環境科学研究科 |
及川武久 |
<研究協力者> |
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独立行政法人農業環境技術研究所 |
莫文紅 |
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
下田星児 |
筑波大学大学院生命環境科学研究科 |
濱田洋平 |
中国西北農林科技大学林学院 |
劉 建軍 |
北京大学 |
王 |
(株)エックス都市研究所 |
横山智子 |
[平成14~18年度合計予算額] 30,660千円 (うち、平成19年度予算額 6,900千円)
[要旨]
草原は世界の陸地面積の1/3、モンスーンアジアの16%を占め、年間0.5PgCの正味の炭素シンクとして機能している。森林に比べて非同化器官を維持するコストが少ない草原の方が光合成の効率という点では優れているという指摘もあり、地球規模の環境変化に対するアジア陸域生態系全域における応答を精度よく評価するためには、このような草原における炭素動態を正確に把握する必要がある。本研究では、光合成回路や生理特性が異なるC3/C4植物が混生する温帯草原において、従来の手法に炭素安定同位体比(δ13C)を用いる手法を併用して炭素動態の解析を行った。対象とした草原における植生調査の結果、LAI・地上部バイオマスともに、生長初期にはC3植物の方が大きいのに対し、後期にはC4植物の方が大きくなるという、優占種の逆転現象が見られた。植生-大気間のCO2交換および土壌呼吸に対するC3/C4植物の寄与率を評価するため、従来のフラックス観測手法にδ13Cを併用して解析を行ったところ、植生調査の結果と同様、光合成・生態系呼吸・土壌呼吸に主に寄与する植生がC3植物からC4植物へと季節的に移行していることが明らかになった。13Cのような化学的トレーサーによる手法は、生態系内部におけるプロセスの推定に有効であり、環境変動に対して複雑な応答を示すC3/C4混生草原の炭素動態に関して、植生間の競合を含めたより詳細な解析が可能となる。また、生態系内部の素過程を記述するプロセスモデルによる炭素動態の推定やモデル内部の素過程の妥当性の検証に貢献できる。
[キーワード] C3/C4混生草原、炭素安定同位体比、GPP、RE、NEE