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[S-1 21世紀の炭素管理に向けたアジア陸域生態系の統合的炭素収支研究]

テーマI:ボトムアップ(微気象・生態学的)アプローチによる陸域生態系の炭素収支解析に関する研究

(2)草原・農耕地生態系における炭素収支の定量的評価に関する研究

  3)青海・チベット高原草原の炭素吸収速度の即時・広域推定[PDF](215KB)

    独立行政法人国立環境研究所
    生物圏環境研究領域 生理生態研究室


唐艶鴻

<研究協力者>

 

    独立行政法人国立環境研究所

陳 晋

  [平成14~18年度合計予算額]  5,180千円 (うち、平成19年度予算額 1,602千円)

  [要旨]

  草原の植物現存量は、植物・土壌炭素蓄積量や草原生態系の炭素吸収速度の推定にきわめて重要なパラメータである。広範囲の植物現存量を推定するためには、衛星データを利用することは有効な手段である。しかし、このような推定を行うためには、植生の分光反射率と地上部バイオマスの関係を解明する必要がある。当該研究では、衛星データを利用するための二つのもっとも困難な課題に取り組んだ。(1)衛星計測データを利用した生産力推定モデルの推定精度を向上するため、生態系の光利用効率(LUE)の推定向上を図った。青海草原のCO2フラックス計測データを使って、散乱光と直射光の貢献を考慮し、調整した反射光合成有効放射とLUEを求め、生態系のGPPを高い精度で推定できるモデルを構築した。また、衛星計測データを利用できるように、MODIS衛星の撮影時間の調整LUEと一日の平均LUEとの相関を調べ、衛星データから草原生態系の生産力をより高い精度で推定することも可能にした。(2)植生の被覆率が高くなると、分光反射率からの推定結果が悪くなる。この問題を解決するための方策を探った。42個のコドラートの分光反射率と地上生物量の測定データを用いて、地上生物量と分光反射率、植生指数、1次微分した反射率(FDR)およびバンド深を表す指数との関係をPLS回帰法によって調べた。その結果、まず、高山草原の地上バイオマスを推定するため、もっとも有効な波長帯は、レッドエッジ(クロロフィルの吸収帯)、近赤外エッジ(水分の吸収帯)およびグリーンエッジであることがわかった。つぎに、1次微分した反射率は、地上バイオマス推定のためのモデル構築において、最も推定の精度が高くなることが示された。さらに、RDVI、TVI、MTVI1等植生指数は、他の植生指数より地上バイオマスとの相関が高いことがわかった。以上の結果から、植物の被覆率が高い地域における地上バイオマスを高精度で推定するためには、より多くの波長域、特に上記のレッドエッジ、近赤外エッジとグリーンエッジの波長域を利用することが有効であることが示唆されている。


  [キーワード]  CO2フラックス、散乱光、直射光、放射、生産力