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[S-1 21世紀の炭素管理に向けたアジア陸域生態系の統合的炭素収支研究]

テーマI:ボトムアップ(微気象・生態学的)アプローチによる陸域生態系の炭素収支解析に関する研究

(2)草原・農耕地生態系における炭素収支の定量的評価に関する研究

  2)青海・チベット高原の土壌炭素蓄積量に及ぼす温暖化影響のモデリング評価[PDF](182KB)

    独立行政法人国立環境研究所
    生物圏環境研究領域 生理生態研究室


唐艶鴻

<研究協力者>

 

    独立行政法人国立環境研究所

羅天祥

  [平成14~18年度合計予算額]  6,879千円 (うち、平成19年度予算額 1,598千円)

  [要旨]

  青海・チベット高原の土壌炭素蓄積量に及ぼす温暖化影響のモデリング評価を行うため、高い標高地域の気候条件・土壌窒素・植生タイプ・植物生長が土壌炭素蓄積量に及ぼす影響を解明する必要がある。本研究では、チベット高原の高山草原群落、低木群落と亜熱帯森林群落を含めた地域の現地調査データを利用し、土壌炭素蓄積量に及ぼす気候的、生物的要因との関係を究明した。その結果、まず、チベット高原における草原と低木群落の土壌有機炭素量は、降水量の増加に伴い増加するが、気温の変化との明瞭な相関が見られなかった。しかし、森林生態系では、土壌有機炭素の蓄積量は気温の低下に伴い増えるが、降水量の変化からの影響が少ないことがわかった。つぎに、土壌有機炭素の蓄積量は、草本群落の葉の平均寿命と明瞭な関係が見られなかったが、森林群落では葉面積指数とともに高くなる傾向があることが示された。さらに、土壌有機炭素の蓄積量は、すべての植物群落において、年間気温と降水量より、葉群の平均寿命と葉面積指数との相関が高いことがわかった。これらの結果から、青海・チベット高原の土壌有機炭素蓄積量は、広大な草原地域では、温暖化に伴う温度の上昇より降水環境の変化に注目する必要がある。また、高原全体の土壌炭素蓄積量に及ぼす諸要因の中で、過放牧や森林伐採による地上部バイオマスの減少や、温暖化に伴う植物群落の遷移の影響も再評価する必要がある。


  [キーワード]  炭素収支、温暖化、土壌炭素、植物群落、温帯草原