検索画面へ Go Research


[S-1 21世紀の炭素管理に向けたアジア陸域生態系の統合的炭素収支研究]

テーマI:ボトムアップ(微気象・生態学的)アプローチによる陸域生態系の炭素収支解析に関する研究

(2)草原・農耕地生態系における炭素収支の定量的評価に関する研究

 1) 温帯高山草原生態系における炭素の吸収、放出及び蓄積の総合評価と温暖化影響の解明[PDF](456KB)

    独立行政法人国立環境研究所
    生物圏環境研究領域 生理生態研究室


唐艶鴻

    独立行政法人農業環境技術研究所
    地球環境気象研究グループ 大気保全ユニット


川島茂人

    筑波大学 生物科学研究科

鞠子茂

    (財)自然環境研究センター

市河三英

<研究協力者>

 

    独立行政法人国立環境研究所
    生物圏環境研究領域 生理生態研究室


廣田充

    独立行政法人農業環境技術研究所
    地球環境気象研究グループ 大気保全ユニット


杜明遠・米村正一郎・井上聡

    独立行政法人海洋研究開発機構
    地球環境フロンティア研究センター


加藤知道

    茨城大学理学部

塩見正衛・大塚俊之・陳俊

    東京大学農学部

沈海花

    筑波大学生物科学研究科

張鵬程

    中国北京大学

方精雲・楊元合

    中国科学院西北高原生物研究所

趙新全・李英年

  [平成15~18年度合計予算額]  71,709千円(うち、平成18年度予算額 14,402千円)

  [要旨]

  青海・チベット高山草原の炭素収支を把握するため、まず、渦相関法で青海海北地区のKobresia(ヒゲハリスゲ属)草原の炭素・水・エネルギーフラックスの時間変動を観測した。その結果、当該草原の正味炭素吸収速度(NEE)は年平均およそ120gCm-2yr-1であり、日NEEの最大値は冬から夏にかけて約-2gCm-2d-1から4gCm-2d-1までの変動があること、NEEの短期変化は温度環境とくに昼夜の温度差からもっとも大きな影響を受けていることがわかった。つぎに、青海・チベット高山草原炭素収支の空間的不均一性を把握するため、高原環境に適したNEEチャンバーを開発し、異なる草原植生の生態系光合成・呼吸の測定を行った。その結果、上記のヒゲハリスゲ草原では植物種多様性や葉群の構造(針葉と広葉の比など)は、草原生態系の光合成活性に大きく影響し、針葉の多い群落は光合成活性が高いことがわかった。一方、植物や微生物の呼吸を含めた生態系呼吸は、植物根の乾燥重量とくに土壌中10cmまでの植物根の乾燥重量に非常に高い相関が示された。また、草原植物地上部(葉と茎)の現存量のもっとも高い時期(7月~8月)に、青海・チベット高原中央部の7つの典型的な草原で生態光合成と呼吸を測定した結果、生態系の正味炭素吸収速度、生態系の呼吸速度は、草原植生によって大きく異なり、放牧量の多い退化草原がもっとも低く、高山湿地草原がもっとも高いことがわかった。さらに、青海・チベット高原全体の炭素蓄積量と炭素収支を把握するため、広範囲の土壌炭素調査を行い、衛星データや気象データを利用し、草原土壌炭素蓄積量と蓄積速度の推定を行った。その結果、チベット高原の土壌炭素蓄積密度は平均4.25kgm-2で、1980年代からの20年間、平均23.2 gm-2yr-1から32.6gm-2yr-1の速度で土壌炭素が蓄積されていることが示された。本報告書では、主に昨年の未発表の研究成果を紹介すると同時に、これまで主な研究成果をまとめた。

  [キーワード]  高山、温暖化、草原、炭素収支、土壌炭素