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[S-1 21世紀の炭素管理に向けたアジア陸域生態系の統合的炭素収支研究]

テーマI:ボトムアップ(微気象・生態学的)アプローチによる陸域生態系の炭素収支解析に関する研究

  3)熱帯森林生態系における炭素収支[PDF](565KB)

    京都大学 大学院農学研究科

谷誠・小杉緑子

    独立行政法人森林総合研究所

新山馨・松浦陽次郎

    独立行政法人産業技術総合研究所

蒲生 稔

    独立行政法人国立環境研究所

藤沼康実
奥田敏統(平成17年3月まで)

    鹿児島大学 農学部

米田 健

    島根大学 生物資源科学部

山下多聞

    (財)自然環境研究センター

菰田 誠

<研究協力者>

 

    三重大学大学院生物資源学研究科

松尾奈緒子

    京都大学農学研究科

大久保晋治郎・伊藤雅之・ 横山直人・福井佑介
三谷智典・小西信二・ 和田卓己・片山辰弥
武田博清・清水昭宏・ 神崎護・金子隆之
太田誠一・中作明彦 清原祥子・梶原嗣顕

    独立行政法人森林総合研究所

梶本卓也・田中憲蔵・高梨聡

    環境省地球環境局総務課研究調査室

佐藤保

    独立行政法人国際農林水産業研究センター

八木橋勉

    独立行政法人産業技術総合研究所

前田高尚・近藤裕昭

    広島大学 総合科学研究科

近藤俊明

    静岡大学 農学部

水永博己

    鹿児島大学 農学部

田代慶彦

    島根大学 生物資源科学部

川口英之

  [平成14~18年度合計予算額]  235,842千円 (うち、平成18年度予算額 32,608千円)

  [要旨]

  熱帯林では光合成による炭素収支を評価するため、半島マレーシアのPasoh熱帯降雨林とタイのSakaerat熱帯常緑季節林において観測・調査を行った。Pasohでは、日中のCO2フラックスはほとんど季節変化を持たず午後に低下すること、生態系呼吸量としての夜間放出量は土壌乾燥期に減少するため、森林全体としてのCO2吸収量は乾燥期にむしろ増大する傾向が明らかになった。また、個葉ガス交換や群落内のCO2動態測定結果を基に炭素多層モデルによる解析を行い、午後における光合成の大きな低下に対して、吸水阻害などに起因すると思われる葉の不均一な気孔閉鎖がかかわっていることがわかった。これらのCO2動態の詳細な観測と解析によって、年間では少量の炭素吸収を示すことが明らかになった。生態学的調査では、地下部の掘り取り調査を含む2回の現存量調査、細根バイオマスおよび細根の回転率調査、大面積プロットにおける倒木調査を実施した。その結果、近年の倒木の発生によって、枯死材集積とその炭素放出が炭素収支において長期間にわたり大きな役割をもち、NEPのマイナス傾向が基調になるが、これには大きな空間変動があって、NEPがプラスになる場所や期間も現れることがわかった。Sakaeratではフラックス観測によると非常に大きな炭素吸収が推定されたが、夜間のCO2放出を補正することによりかなり改善される結果を得た。生態学的調査では、森林の更新動態による年々変動を示してはいるが、炭素収支がほぼ安定平衡状態にあることがわかった。以上のように、熱帯林の炭素収支は平衡状態に近いが、空間的な不均質性によって、あるいは気候条件の年々変動や倒木発生などの時間変動を受けて、炭素の放出吸収が変動する実態が明らかにされた。


  [キーワード]  炭素収支、生態学的調査、フラックス観測、多層モデル、枯死材