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[S-1 21世紀の炭素管理に向けたアジア陸域生態系の統合的炭素収支研究]

テーマI:ボトムアップ(微気象・生態学的)アプローチによる陸域生態系の炭素収支解析に関する研究

(1)森林生態系における炭素収支の定量的評価に関する研究

 1) 亜寒帯森林生態系における炭素収支[PDF](638KB)

    独立行政法人森林総合研究所 立地環境研究領域

松浦陽次郎

    独立行政法人産業技術総合研究所
    環境管理技術研究部門 大気環境評価研究グループ

晋(平成17年3月まで)
村山昌平・三枝信子

    北海道大学 大学院農学研究院

小池孝良

    信州大学 農学部

安江恒

    京都大学 フィールド科学教育研究センター

徳地直子

    神戸大学 大学院自然科学研究科

金澤洋一

    龍谷大学 国際文化学部

大澤晃(平成17年4月から京都大学)

<研究協力者>

 

    独立行政法人森林総合研究所
    立地環境研究領域


森下智陽

    独立行政法人森林総合研究所
    九州支所


梶本卓也

    独立行政法人森林総合研究所
    気象環境研究領域


中井裕一郎

    独立行政法人森林総合研究所
    水土保全研究領域


大丸裕武

    独立行政法人産業技術総合研究所
    大気環境評価研究グループ


谷田部裕美・近藤裕昭・飯塚悟・王輝民

    北海道大学
    北方生物圏フィールド科学センター


笹賀一郎

    岡山大学大学院 環境学研究科
    北方生物圏フィールド科学センター


廣部宗

  [平成14~18年度合計予算額]  240,865千円(うち、平成18年度予算額 33,300千円)

  [要旨]

  北東アジアに広がる落葉針葉樹林(カラマツ林)生態系における炭素収支と炭素循環を、タワーフラックス観測と生態学的手法によって明らかにした。観測拠点は中国東北部の黒竜江省ハルピン市郊外の老山(45N-128E)と、中央シベリアのトゥラ(64N-100E)の2箇所に設けた。また、フラックス観測を北海道苫小牧国有林(苫小牧サイト)では2000年夏から2004年9月まで実施している。
  苫小牧サイトでは2000年夏から2004年9月まで、老山サイトでは2002年以降、微気象観測と各種フラックス観測を実施した。その結果、微気象学的方法により、苫小牧サイトにおける2001-2003年の生態系純生産量(NEP)では平均的におよそ320 gC m-2 year-1 の炭素吸収があることがわかった。また、NEPの年々変動は、第一に夏季(7-8月)の日射量に左右される事がわかった。一方老山サイトでは、2003年10月から2004年9月の1年間に得られた連続データから年間NEPを算出したところ、夜間のフラックス観測結果に対する補正方法の違いによって121-190 gC m-2 year-1 の幅をもつ結果が得られた。老山では生態学的な手法で求めたNPPは大きい値を示したため、NEPがかなりフラックス観測結果から求めた値を上回った。一方、永久凍土上のカラマツ林生態系(トゥラ)では、収支、循環量とも小さかったが、生態学的手法で求めたNEPはマイナス、すなわちソース側になった。これは細根の枯死量を過小評価、林床植生固定量が算入されていないことによると考えられた。永久凍土地帯のカラマツの年輪成長は5月下旬から6月上旬の気温と正の相関が高かった。炭素固定に影響する土壌窒素の動態は、厳しい環境下におけるアンモニア態窒素の卓越と不動化プロセスの卓越等の特徴が明らかになった。北東アジアのカラマツ林生態系は、環境条件によって大きく炭素集積量の分布が異なっていた。


  [キーワード]  北東アジア、カラマツ林生態系、フラックス、炭素収支、NEP