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[キーワード]輸入昆虫、輸入爬虫類、寄生生物、ダニ、原虫

[F-3 侵入種生態リスクの評価手法と対策に関する研究]

(2)随伴侵入生物の生態影響に関する研究[PDF](1,450KB)

  独立行政法人国立環境研究所
  環境リスク研究センター


五箇公一

  麻布大学獣医学部

宇根有美

<研究協力者>

 

  国立感染症研究所 細菌第一部

川端寛樹・高野 愛

  国立感染症研究所 ウィルス第一部

安藤秀二・岸本嘉男

  大原総合病院附属大原研究所

藤田博巳

  独立行政法人森林総合研究所

岡部貴美子

  千葉大学 園芸学部

角田 隆

  [平成16~18年度合計予算額]  61,111千円(うち、平成18年度予算額 20,539千円)

[要旨]

  ペット用あるいは産業用に輸入されている輸入爬虫類およびに輸入昆虫類おける寄生生物の持ち込み状況の把握と生態影響に関する研究を行った。輸入爬虫類の寄生生物に関する研究では、輸入爬虫類に寄生するウィルス、真菌、細菌、原虫類などのミクロ・パラサイトを採集し、分類同定を行った。ヒョウモントカゲモドキのクリプトスポリジウムの日本への侵入を初めて確認し、インドネシアで捕獲されたツリーモニターから新種ヘルペスウイルス感染症を検出した。リクガメが保有する病原体・感染症のリスク評価を行うために大量死した事例の解析を行った結果、世界で3例目のリクガメの核内コクシジウム症を発見した。
  さらに、世界中で猛威を振るっているカエルのツボカビ症を、アジアで初めて確認した。今回、世界中の両生類の個体数の減少に関っているとされるツボカビが国内で確認されたことから、麻布大学・国立環境研究所が中心となって緊急検査体制を確立した。
  輸入爬虫類に寄生するマクロパラサイトとして、マダニ類の持ち込み状況を調べた結果、様々な国から輸入されるトカゲ、ヘビ、カメ類からマダニが採集された。マダニを形態分析およびDNA分析に基づき分類同定を行った結果、多くが未記載種であることが示唆された。さらに一部のマダニ体内から新型ボレリア原虫が検出され、寄生性ダニの持ち込みが未知の病原体の侵入をもたらすリスクがあることを実証した。
  輸入昆虫類の寄生生物に関する研究では、様々な地域から輸入されているペット用甲虫類からダニ類を採集して、分類・同定を行った。宿主-寄生生物間の共種分化ユニット解析の事例として、クワガタムシと寄生性ダニの分子系統比較を行った。その結果、宿主の系統分化と地理的分布拡大に合わせて、寄生性ダニも宿主特異的に分化するとともに、宿主転換をして分布拡大してきた歴史的背景が明らかとなった。寄生性ダニとクワガタムシの宿主交換実験を行った結果、外国産のダニは日本産クワガタムシにも感染可能であり、外国産クワガタムシの侵入に伴う寄生ダニの浸食が懸念された。