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[キーワード]遺伝子流動、フタバガキ科、マイクロサテライトマーカー、保全、遺伝的多様性

[E-4 熱帯域におけるエコシステムマネージメントに関する研究]

(2)多様性評価のためのラピッドアセスメント開発に関する研究

②熱帯雨林の遺伝的多様性の指標化に関する研究[PDF](523KB)

  独立行政法人森林総合研究所
  森林遺伝研究領域  樹木遺伝研究室


津村義・谷 尚樹・上野真義・角 友之

<研究協力者>

 

  独立行政法人森林総合研究所
  生物圏環境研究領域 熱帯生態系保全研究室


奥田敏統・近藤俊明

  京都大学大学院農学研究科

内藤洋子

  財団法人自然環境研究センター

西村 千

  [平成14~18年度合計予算額]  26,421千円(うち、平成18年度予算額 4,389千円)

[要旨]

  フタバガキ科のNeobalanocarpus heimiiを用いて、交配距離、自殖率の推定および種子重が発芽率に与える影響の推定を行った。調査区内における平均交配距離は開花個体密度によって異なり、低開花密度期が高開花密度期よりも有意に長かった。種子サイズを自殖由来種子と他殖由来種子で比較したところ、自殖由来の種子は他殖由来の種子よりも有意に軽かった。また発芽率を比較したところ、軽い種子は重い種子より有意に発芽率が低かった。この二つの結果より、N. heimiiiには近交弱勢があり、繁殖個体数の減少は本種の集団の維持にとって脅威である可能性が示唆された。
  また同じく、フタバガキ科林冠木であるShorea leprosulaを対象に、複数回起こった一斉開花間の他殖率を比較したところ、変化がないことが分かった。しかしながら種子段階よりも実生段階で他殖率が高くなることが分かった。これは実生段階に至るまでの近交弱勢が起こったことによると考えられた。また、S. leprosulaの交配様式と遺伝子流動は開花個体密度と密接に関連していることが明らかになった。調査は約100haという大きなプロットを設置して行ったが、プロット外からの花粉の流入が多く見られた。このように実際の花粉流動はプロット外からが多いため、これまで行ってきた直接推定法だけでなく、間接推定も併用してフタバガキ科樹木の遺伝子流動を把握していく必要があること考えられた。こうした背景から花粉流動のモデルを構築した。