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[キーワード]バラスト水、シスト、渦鞭毛藻、有害植物プランクトン、赤潮

[D-4 大型船舶のバラスト水・船体付着により越境移動する海洋生物がもたらす生態系攪乱の動態把握とリスク管理に関する研究]

(3)バラストタンク環境における有害植物プランクトンシストの生理・生態学的研究[PDF](1,864KB)

  独立行政法人国立環境研究所
  生物圏環境研究領域 微生物生態研究室


Mary-Hélène Noël

  [平成16~18年度合計予算額]  2,100千円(うち、平成18年度予算額 2,100千円)

[要旨]

  沿岸域の海底堆積物中に存在する有害植物プランクトンのシストが、バラストタンク環境下でどのような生理・生態的反応を示すのかを解析、解明するために、実験室に擬似的なバラストタンク環境を再現して、堆積物および培養株を用いた培養試験を行った。まず実験に最適な堆積物選定のために、日本の港湾および瀬戸内海で採取した海洋堆積物表層サンプル中に含まれる有害藻類シストの多様性を調査した。様々な渦鞭毛藻およびその他の有害藻類のシストが検出された堆積物試料を一定の希釈段階で培養処理を行い、栄養細胞の出現頻度から、シスト数の推定を試みた。有害な種はそれぞれ200-500シスト/g (堆積物湿重量)に達することが示唆された。すなわちバラストタンクの容量と海水中に再懸濁する堆積物の推定値から、一度の航海で、2千万-4億個のシストが運搬される可能性が考えられた。バラスト水を介して海洋堆積物が輸送されることにより、生物拡散の高いリスクが存在することになる。バラストタンクの擬似的な環境を構築して行った培養試験では、シストの発芽がタンク内環境下に置かれることで促進されることが示唆された。更に種によってはバラストタンク環境下に置かれた場合、栄養細胞からシスト様細胞に移行する現象も認められた。リバラスト処理を行うことで、こうした堆積物中のシストや栄養細胞から移行したシスト様細胞が、外洋環境に放出されることになり、海流等により、グローバルスケールで様々な環境に拡散する危険性も考えられた。