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[キーワード]バラスト水、有害植物プランクトン、越境移動、生態系攪乱、Chattonella

[D-4 大型船舶のバラスト水・船体付着により越境移動する海洋生物がもたらす生態系攪乱の動態把握とリスク管理に関する研究]

(2)バラスト水・船体付着生物群集遷移の把握及び管理に関する研究[PDF](3,698KB)

  独立行政法人国立環境研究所
  生物圏環境研究領域 微生物生態研究室


河地正伸・出村幹英・大村嘉人

  独立行政法人国立環境研究所
  化学環境研究領域 動態化学研究室


功刀正行

  東京大学

福代康夫・都丸亜希子・大村卓朗

  静岡県立大学

橋本伸哉

  東海大学

津金正典・金子仁

<研究協力者>

 

  日本郵船 安全環境グループ

舟山純・前田君丈

  [平成16~18年度合計予算額]  97,268千円(うち、平成18年度予算額 29,000千円)

[要旨]

  バラストタンク内の物理化学的環境特性とクロロフィルの長期モニタリングを行い、バラスト水の温度、溶存酸素濃度(DO)、クロロフィル等の経時変化、季節変化、リバラストの影響等に関する詳細な情報を得た。タンク内に取り込まれた生物は、トータルでは、時間経過とともに数を減らしていたが、一定数を保持するグループ(一部の珪藻、原生動物)や増加するグループ(原生動物など)も一部認められた。リバラストの後、マイクロサイズのプランクトンの生物量は初期値の0.005-0.01%に激減し、原生動物の衰退も認められたが、ピコプランクトンは初期値の10~70%の減少に留まった。こうした生物の希薄なサンプルでも培養処理で増殖する種類が確認されており、リバラストを行っていても生物の越境移動が起こりうることが示唆された。細菌を中心とする微生物群集の調査では、リバラストにより全菌数・ウイルス状粒子は減少するが、一部の細菌や鞭毛虫の増殖が認められた。またドック入りした船舶のバラスト水からは糸状微生物が高頻度に検出され、独自の微生物生態系が形成されている可能性が示唆された。バラストタンク内の堆積物には、植物プランクトンのシストや栄養細胞、原生動物など様々な生物が確認され、これらの生物の除去処理は、越境移動を防止する上で大きな課題と言えた。既存の船でも対応可能と考えられる堆積物の淡水処理や乾燥処理の予備試験で、微生物の生存率が0になる結果も得られた。バラストタンクに特徴的な環境要因に関する培養試験から、ピコサイズの種を含む植物プランクトンの一部の種で暗条件に耐性をもち、栄養塩無添加のバルク系でも同様の結果が得られた。また世界的拡散が問題になっている有害種Chattonellaを対象としたマイクロサテライトマーカーの開発にも成功した。これまでの調査及び実験結果を踏まえ、バラスト水条約発効時に運用上考慮すべき事項を整理した上で、将来におけるバラスト水管理手法への提言をまとめた。条約発効後の国内法の整備に際し、有効に活用されることが期待される。