検索画面へ Go Research


[キーワード] 中緯度、オゾン、QBO、極渦、化学輸送モデル

[A-1 オゾン層破壊の長期変動要因の解析と将来予測に関する研究]

(3)中緯度における長期オゾン変動の解析と変動要因の解明に関する研究[PDF](1,773KB)

  独立行政法人国立環境研究所
  大気圏環境研究領域 大気物理研究室


秋吉英治

  国土交通省気象研究所

柴田清孝

  北海道大学大学院地球環境科学研究科

山崎孝治

  奈良女子大学理学部

林田佐智子

<研究協力者>

 

  独立行政法人国立環境研究所

吉識宗佳、坂本圭

  [平成14~18年度合計予算額] 72,634千円(うち、平成18年度予算額 13,359千円)

[要旨]

  中緯度域のオゾン濃度は様々な要因によって変動を起こしていると考えられている。中緯度領域の化学的なオゾン破壊のみならず、低緯度あるいは高緯度からオゾン濃度の低い空気が多量に中緯度へ流入することも中緯度のオゾン濃度変動に多大な影響を与える。中緯度域にこれまでに観測されたオゾントレンドに影響を及ぼす要因を明らかにするため、中緯度での化学オゾン破壊に重要な成層圏エアロゾルの長期変動および臭素の影響、熱帯域からのオゾン濃度の低い空気の移流に影響を与える赤道大気の準2年振動(Quasi Biannual Oscillation, QBO),そして、北極域でオゾン破壊が進んだ空気の中緯度オゾン濃度へ与える影響について、衛星データ、化学輸送モデル、トラジェクトリー解析を用いて解析を行った。その結果以下のことが明らかとなった。(1)1991年6月のピナツボ火山爆発によるオゾン層への影響は1997~1999年くらいまでにはなくなった。(2)臭素によって中緯度では10~20DU程度のオゾン量が破壊されている。(3)台湾の東海上の亜熱帯西太平洋域の冬に起こる220DU以下の低オゾン域の出現にはQBOの影響が大きい。(4) QBOの周期にはオゾンによる大気加熱が関係している。(5) QBOはQBOに伴う子午面循環と成層圏の波動活動との相互作用によって中高緯度オゾン量に影響を与えている。(6)1997年のような安定した北極渦の下では極渦内でのオゾン破壊の進んだ空気が極渦外の空気と混合することによって極渦外のオゾン濃度を低下させる働きは、北極渦境界のすぐ外側の領域では大きいがその影響は極渦境界から低緯度側に等価緯度10°の範囲に限られ中緯度全体(等価緯度30-60oN平均)では小さかった。以上の、中緯度オゾンにとって重要と思われる過程を取り込んだ化学気候モデルを使った1980~2004年のオゾン変動の再現実験を行った。その結果、火山爆発によるオゾン濃度の急激な減少とその後の数年かけての回復、QBOによる低緯度および中高緯度のオゾン変動、臭素によるオゾン破壊などが再現された。