検索画面に戻る Go Research



(2.76MB)

[B−9 太平洋域の人為起源二酸化炭素の海洋吸収量解明に関する研究]

(4)海洋二酸化炭素データ統合に関する分析標準化に関する研究

独立行政法人国立環境研究所

 

 地球温暖化研究プロジェクト炭素循環研究チーム

野尻幸宏・荒巻能史・江頭 毅

  同

A. Fransson
(日本学術振興会特別研究員)

 

[平成13〜17年度合計予算額]

 平成l3〜17年度合計予算額 48,963千円
 (うち、平成17年度予算額 3,322千円)
※上記の予算額には、間接経費 11,305千円を含む)

[要旨]

  海洋の二酸化炭素吸収現象を全海洋規模で推定するには、全海洋的国際共同観測とデータ統合解析が必要であるが、測定に偏差が存在すると統合解析が困難になる。本研究では、表層二酸化炭素分圧測定について測定の国際相互比較を行い、データ統合への活用を図った。二酸化炭素分圧測定の正確さを検証するためには、装置を持ち寄る相互比較実験が最もよい方法である。2003年3月に大容量の室内海水プール(水産総合研究センター水産工学研究所)において、国内3機関、海外8機関から、13台の海洋表層二酸化炭素分圧測定装置を集める相互比較実験を行った。実験結果から海洋表層二酸化炭素分圧測定における誤差要因が明らかになった。水温変化は、平衡器水温と表面海水温の精密測定で補正可能であるが、できるだけ水温変化をさせない装置設置が望まれる。有機物分解による正の測定誤差は補正困難であるので、平衡器を清浄に保ったり、海水流量を多くしてその効果を小さくしたりすることが必要である。再供給空気による誤差は、低二酸化炭素分圧で測定値を高くする方向の誤差、高二酸化炭素分圧で逆の効果があり、再供給空気量を減らす、あるいは、二酸化炭素分圧を海水に近づけた再供給空気を導入するような工夫が必要である。平衡器内圧は大気圧と等しくすることが必要であるが、場合によっては適切に補正することが有効であった。今回の知見は、世界各国各機関の海水二酸化炭素分圧測定の正確さを高めることに有効であると考えられる。相互検討実験で高い正確さを確保していることが確認された測定装置を、日本―豪州―ニュージーランド航路の定期貨物船に新造船時に搭載した。これまでの貨物船観測実施の経験と相互比較実験で得たノウハウを踏まえて多くの改良を行った。2005年11月の初航海で装置の試験運転を行い、特性を確認して2006年からの本格運転を迎えることとなった。また、表層二酸化炭素分圧観測手法として期待されている自動ブイによる測定について、相互比較実験で確立した手法により正確さを確保する実験を行った。

[キーワード]

 海洋表層二酸化炭素分圧、計測手法、相互比較実験、平衡器、国際共同観測