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[H-11 京都議定書の目標達成に向けた各種施策(排出権取引、環境税、自主協定等)の効果実証に関する計量経済学的研]

(1)環境税が企業行動に及ぼす効果に関する計量経済学的研究

独立行政法人国立環境研究所

 

 社会環境システム研究領域 環境経済研究室

日引 聡

 〈研究協力者〉 上智大学経済学部

有村俊秀

           カナダ コンコーディア大学

今井 晋

[平成14〜16年度合計予算額]

 平成l4〜16年度合計予算額 23,112千円
 (うち、平成16年度予算額 6,662千円)

[要旨]

  京都議定書での排出目標を遵守するための方策として、炭素税(環境税の一種。)の導
入、自主的取組、省エネ規制などをはじめとする環境パフォーマンス規制など、さまざまな政策
が検討されている。しかし、環境税にせよ、規制的手段にせよ、一旦導入すると、弾力的にその
水準を変更することは難しいという問題がある。たとえば、経済成長の局面では、環境負荷は増
加するが、税額の引き上げや規制強化は、容易にできない。このうような政策の硬直性の問題を
考える時、環境政策のデザインにあたり、継続的な環境負荷を低減させるインセンティブを企業
や事業所に与える対策を講じることは、長期的に環境負荷の削減を検討する場合に重要である。
 この点について、従来、理論的には、規制的手段は、設定された目標以上に環境負荷を低減す
るインセンティブを企業・事業者に与えないが、環境税などの経済的手段は、長期的に継続的に
環境負荷低減のインセンティブを与えることができるといわれていた。
 本研究では、事業所が直面しているさまざまな政策(規制、環境税(SOx汚染賦課金))や企業
が自主的に実施する環境マネジメントに対する取り組みが、企業の継続的な環境負荷削減インセ
ンティブにどのような影響を与えているかを明らかにし、継続的な環境負荷インセンティブを企
業や事業所に与えていくためにはどのようさ政策を実施すればよいかを検討した。
 その結果、環境マネジメントは継続的に資源(エネルギー、水など)の使用量や大気汚染の環
境負荷の削減に対して継続的な効果をもち、その取組を進めるほど、継続的な削減効果が大きく
なる一方で、規制的手段や賦課金などの経済的手段などの政策は、事業所に対して継続的な削減
インセンティブを与えていないことが明らかとなった。以上の結果から、事業所に継続的な環境
負荷のインセンティブを与えるためには、従来の政策では不十分であり、事業所レベルの環境マ
ネジメントに対する取り組みを促進し、従来の政策を補完することが重要である。

[キーワード]

 環境税、汚染負荷削減、規制的手段、環境マネジメント、順序プロビットモデル